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少し涙目になりながら伝えるいづみを見ると、姉がいたらこんな感じなのかなとどこか遠くを見ながら考える。
『有難う御座います。そろそろお風呂入りましょ。古市さんに叱られちゃいますよ。』
名残惜しいがいづみの肩を押し少し離れて困ったように笑ってみせる。「そうだね。」と笑いながら答えるいづみに安心して無事にお風呂を済ませる。
「手当だけでも。」といういづみの申し出を断り自室へ行こうとすると一成に止められる。
一「Aちゃ〜ん!待ってたよ〜!親睦会しよーよ!」
こちらに向けて大きく手を振る一成に、『親睦会?』と首を傾げる。なんでもこのMANKAIカンパニーには恒例の親睦会という名の組対抗ババ抜き大会があるそうで、唇に手を当てて少し考えてから納得すると荷物を自室に置いてから参加することになった。
ババ抜きのお陰で少しずつ名前と顔が一致してくる。シトロンとの心理作戦で随分と時間を使った気がする。「A、いかと食わず嫌いネ!」と不思議なお言葉をいただき後に至から「意外と負けず嫌いとみた。」と教えてもらう。
なんだかんだ楽しい時間を過ごして就寝時間が迫る。密なんかはもう既に寝ているが、ぼちぼちみんな自室に戻る様子。
少女は少し静かになった部屋でこれからここで暮らしていく幸せであろう日々を思う。
い「Aちゃん、お手伝いなんだけど明後日からお願いしてもいい?明日はゆっくり休んでね。」
『はい、有難う御座います。』
「それじゃあ、おやすみ。」と言い自室へ向かういづみ。その背中を見送り、『わたしも寝ます。おやすみなさい。』とリビングに残る大人組に挨拶をする。
そうして少女の新しい生活の1日目が終わる。少女は儚い幸せの夢を歌い頬に笑みを浮かべて眠りについた。
▽―――
『おはようございます。』
身支度をして顔を洗ってリビングへ行くと既にいづみ、臣、左京、丞が居た。みんなが「おはよう。」と返事してくれる。
臣「朝早いんだな。ほら、朝飯。」
『出掛けようと思って。有難う御座います。』
受け答えをしっかりとして朝食を出されるとその席へ座り『いただきます。』と手を合わせる。
左「出掛けるってどこにだ?」
新聞を読んでいた左京が顔を上げてこちらを伺う。
『知り合いに会うのと、生活用品や家具を見に行こうかと。』
そう告げると「1人で大丈夫か?」とまた伺う。もしかすると古市さんは心配症か?と心の中で疑問に思う。
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作者名:千依 | 作成日時:2021年2月26日 7時