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『お邪魔します。』と小さな声で帰宅する。既に夕食の香りが玄関までしてくる。皆はリビングに居るらしく手を洗ってから向かう。

「おかえりー。」

と、皆がこちらを向いて出迎えてくれる。それに少女は微笑みで答える。

い「Aちゃん、いつも帰りはこの時間くらいなのかな?」

今日の料理当番は臣だったらしくカレーではないようだ。ちらりと食卓を見て心の中で微笑む。

『はい。部活があるのでこのくらいかと。』

嘘も含んでいるが活動をしているのは間違いない。手伝いをしなければまずいだろうか、不安に思う。

い「そっか、駅前に迎えに行こうか?1人だと危ないだろうし…。」

内心ホッとする。心配してくれていただけだった。

左「監督さんが迎えに行くのも危ないだろう。ここは男どもを向かわせる。だから帰る頃に連絡を入れろ。」

心配症な左京が出てくる。少女は1人で大丈夫だと言い張るが左京は折れない。申し訳ない気持ちを抱えながら渋々頷くと左京は満足そうに鼻で笑う。

そうして食事とお風呂を済ませるとやる事があるからと早々に自室へ向かう。
スマホを確認すれば桐谷から「OK」の一言と動画ファイルが送られてきていた。

夕方桐谷へ送ったデータが事務所のチェックを通り桐谷が編集をして預けていた少女のパソコンで某動画サイトへ歌ってみた動画をアップしたのだ。
送られてきた動画ファイルの方を開き完成形を目にする。

スマホの画面を消して今度はルーズリーフを取り出す。夕方作曲した曲に詩をつけていく。

『どこに。……僕を置いて。笑顔が消えない…。』

思い浮かんだ言葉を羅列していく。そして曲に乗せて鼻歌を歌う。そしてまた思い浮かんだ言葉を羅列していく。その繰り返しを行っていく。バツやマルで言葉を選んでいく。大切なワンフレーズが出来上がっていく。そうして少女の1日は終わっていく。



▽―――

至「ん、この部屋…Aちゃん?鼻歌歌って勉強かな。」

片手にコーラを持ちながら至がAの部屋の前を通りかかる。僅かに漏れる鼻歌に、ご機嫌で机に向かい勉強をする少女を思い浮かべて頬を緩めて自室へ再び足を進める。



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作者名:千依 | 作成日時:2021年2月26日 7時

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