王様と番犬 六戦目 ページ26
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人間、ひとつの感覚を失うと、他の感覚でカバーをしようとする性質がある。手っ取り早くそれを利用していたのが、Aの先ほどまでの目を瞑るという行為だ。視覚情報を犠牲に、他の感覚――主には彼で言うところの“勘”を高めていた。やっているのは、それと変わらない。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚――味覚はまあ、置いておくとして――行動に必要なすべての情報を、強制的に、とても乱暴なやり方でシャットアウトした、ただそれだけ。
「しかし――やっていることはそれだけでも、起きている現象はそれだけではない……! Aが今、頼りとして感じ取っているのは、ボールというより幸村の存在。真の意味で幸村に全てを預け、指針としている」
信頼――ではない、それでも。幸村に自らの存在をゆだねきり、あたかも彼に糸を握られたマリオネットのように、意のままに動かされる――言うならばそれは、疑似的な同調!
否、同調と呼ぶには凶悪すぎるその一方通行の首輪――しかし。
ぐり、と踵を無理矢理に反転させ、Aがボールに食らいつく。力いっぱいにはじかれたボールは、強く相手側のコートを捉える。
いびつ極まりないふたりの仮の“同調”は、しかし確かに、これ以上ないほど強力ではあった。
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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時