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What's your name? ● ページ13

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 そうやっていくら嫌だ嫌だと喚いたところで、いつまでも幸村から逃げられるわけがない。大体の場合、彼の決定は絶対的ですらある。部長が絶対、だとか、そういった規定があるわけではないが、幸村精市という男には、それを可能にしてしまう雰囲気を持っていた。
 その試合は、発端から数日後に行われることになった。

「あ゛ー…………」
「うるっさ」

 やつ当たり気味にラケットをぶんすかと振り回しては呻き声を上げるAに応じる仁王は、対してとても楽しそうだ。この男、Aが困っているのが愉快でしかたないらしい。

「幸村精市ィ……」
「嫌がりすぎじゃろ」
「アイツほんとさ……アイツほんとさァ!」
「日本語」

 暴れ出さんばかりの彼に、そんなに嫌なのか、と問いたくなる。

「嫌だわ馬鹿! 俺ダブルスきらいなの! 特にアイツとはもう二度とやらねェって思ってたのに!」
「でもやるんじゃろ?」

 妬いてしまうナリ。茶化すように仁王は笑った。

「お前が言うなっつの。いっつも柳生やぎゅー言いやがってるくせに」

 じっとりと細められた視線が返ってきて、仁王は逃げるように目を逸らした。


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 その日は自主練が主な練習メニューになっている日だった。噂を聞きつけ、各自ノルマを終えた者たちが少しずつ、試合を見届けようとコートの周りに集まり始めている。

「……それで、いつまでお前は膨れているつもりだ? 赤也」

 ノートとペンを構えて分析モードの柳が、いつも通りの涼しい顔で言った。ぶすくれた赤也が「だって!」と喚く。

「なんで幸村部長とダブルス組むのがA先輩なんすか!」
「幸村が指名したからだろう」

 素知らぬ顔でにべもなく答えたのは真田だ。

「なんで俺じゃねえんすか!」
「これはこれは、大きく出ましたねえ」

 苦笑を浮かべるのは柳生。

「ここは次期部長の俺に色々指導してくれる場面じゃねえんすか!」
「自分で言うな、自分で」

 あきれ顔のジャッカル。

「俺だったら嫌がったりしないのにー!」
「いや俺もあそこまで嫌がられるとは……」

 ブン太はどこか遠い目だ。
 ああもう! と赤也は叫ぶ。

「大体、A先輩、ダブルス下手じゃん!」

 そのセリフに、ブン太は一瞬きょとんとした表情を見せ、

「……あ、お前知らないんだっけ」

 と言う。

「お前が入学する前、俺たちが一年生だったとき――あのふたり、ダブルス組んでたんだぜ」


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角砂糖(プロフ) - 美琴さん» ありがとうございます!!(大声) (2020年3月11日 19時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
美琴 - 好きです(突然の告白) (2020年3月9日 20時) (レス) id: 0419c563a9 (このIDを非表示/違反報告)
角砂糖(プロフ) - 蘇芳さん» この作品を愛していただき本当にありがとうございます。この話の続編は、今の所はあまり考えていません。今非常に私生活が忙しく、それが一段落したら何か書きたいなとは思っていますので、いつになるかわかりませんが、もし気が向けばお付き合いいただけると幸いです。 (2020年1月30日 4時) (レス) id: 651af228bd (このIDを非表示/違反報告)
蘇芳(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいました!もしもあるのなら続編楽しみにしています。これからも頑張ってください! (2020年1月24日 20時) (レス) id: ec6c109e68 (このIDを非表示/違反報告)
ピット☆(プロフ) - 角砂糖さん» そうです!覚えていてもらえて嬉しいです!!予定があるかはわかりませんが次の作品をお待ちしてます! (2019年11月20日 1時) (レス) id: f631e9f6d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:角砂糖 | 作成日時:2019年3月18日 21時

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