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質問をしてもいい時間を設けられたわけだけど、いざとなるとなにを聞けば良いのかわからなくなる。あれもこれも聞きたい。しかし、ぽんぽん出てきたものでは、話の脈絡がない。このおとなしそうな少年よりおとなげない姿は見せたくないプライドが私にはあったのだ。ふぅ、と息をはくと私は彼に問いかけた。
「ここって、琥珀図書館で合ってますよね？」
コクリと頷きながらクラネは返事をしてくれた。
「もちろんです。正真正銘、琥珀図書館です。厳密に言えば琥珀図書館の裏、ですけれども」
「その裏、ってなんですか？」
「……お答えできません」
肝心な部分は言えないようだ。これがおそらく答えられない質問の一つなんだろう。まだあるというのか。まあ、質問していけばどれが答えてくれないのか、わかるはず。
「わかりました。じゃあ、美門さんと竜条さんはどこに？」
この血が二人のではないことを祈りながらちらりと血のついているところに目をやった。乾いているみたいなのでかなり時間は経っていると思うのだが、そのままにしておく神経を疑ってしまう。この質問にも、クラネは顔色一つ変えず答えた。
「そのお二人ですが、今はこちらの本に入っております」
と、言いながら高級そうな布でカバーされた小説を取り出した。紺色の布に金色の文字で「虚構 -キョコウ-」と刺繍されている。クラネが何を言っているのか私にはさっぱりわからない。
「……どうしてですか？」
「もともと、琥珀図書館の裏は人間が入れないようになっているんです。まあ簡単にいえば、住んでる世界が少々違い、交わらないように形成されているのです」
溜息をつきながら「しかし」と話を続けるクラネ。
「稀に別の世界にいる人間が入り込んでしまう。こちらの世界に入らぬよう、本の中に閉じ込めるのがこの世界のルールです。イコール、元の世界にも戻ることは非常に難しいです」
視線を下に落としながら話すクラネ。
「しかし最近、頻繁に人間が来るようになりましたけどね」
頻繁に、という言葉が引っかかった。舟木さんもここに辿り着いたのだろうか。しかし、果たして彼女にあのパスワードがわかったのだろうか？ なんにせよ、まだ気になることがたくさんある。
彼の言っていること全てが真実だという確証はないので、なにを信じればいいのかわからない。
「どこからが嘘でどこまでが嘘か、決めるのは構いませんが、勘違いをして後悔をした……なんてことにならないように」
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