◆ 【待ち時間】 ページ25
次に意識を取り戻したときには、私は白い天井を見つめていた。ベッドに横たわっているみたいだ。しかし、いったいいつ、こんなところで寝てしまったのだろう。前後の記憶を思い出してみる。
たしか私は琥珀図書館の裏口に来て、パスワードを入力したはず。クラスメイト、だったか。そして、もう二人いたはず。……美門さんと竜条さんはどこに行ったんだろう？ここは病室で、隣のベッドで寝ているのかもしれない。きっと夢だ。あんな薄気味悪いところ、園蘭町にあるわけがない。
そう思いながら起き上がって辺りを見渡す。しかし、二人の姿は見えなかった。さらに、白い壁にはところどころ赤い箇所があった。よくみると、ベッドにも赤い液体が染みている。ペンキか、最悪の場合……血？ まさか、美門さんも竜条さんも――
不吉なことを考えてしまう。首をぶんぶんと振って考えを振り払った。きっと二人なら大丈夫だ。だって私だって大丈夫だったんだから。なんの根拠もなくそう決めつけたが、そうするしかなかった。
コンコン、と音がいきなりして、びくりと肩を揺らした。扉があったから、入ってもいいかと聞くために鳴らしたんだろうけれど、突然鳴らされるとびっくりしてしまう。
「……ど、どうぞ…………」
震えた声で言うと、キィッと音を立てながら扉は開いた。そうして部屋に入ってきたのは、私より少し幼い男の子だった。けれども、その風貌は明らかに私よりおとなびている。それをさらに際立たせるかのようにモノクルをかけ、サスペンダーをつけていた。とても賢そうにみえる。
「私は琥珀図書館の裏の司書を務めているクラネと申します」
そう言い、丁寧にお辞儀をしたクラネという人物。アジア系の人ではないということは、見た目でも判断できた。金髪に、綺麗なブルーの瞳。西洋特有の目をしている。
「色々質問したい、とでも言いたそうなお顔ですね」
そりゃ、まあ、たんまりと。
「では、貴方が満足されるまで質問に答えましょう。答えられないものを省き」
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