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その後は、お父さんから受けた怪我を治療しながら、平穏な生活を送っていた。だけど、気持ちが晴れなかった。なぜだか、悪いことをしたような気分だった。憂鬱。前のように明るく振る舞うこともできない。疲れているのか必要最低限の行動しかとれなかった。喋る必要性も感じない。これが無気力というんだろうか。魂が抜けたように、部屋の隅に座り1日を過ごす日々。
そんなくろを、お父さんのお姉さんはだんだん気味悪がった。接し方は変わらなかったものの、眉をひそめてくろを見てくる。愛されてる気がしない。お母さんがくろに優しかったときのように、確かな愛を感じれるものがほしくなった。だから、暗い性格を、昔のように明るくした。そうしたら、お父さんのお姉さんは笑ってくれた。久々にくろに向かって笑いかけてくれたとき『愛してくれている』と感じだ。でも、その感情はすぐに消えた。一時的なもので、1人になるとすぐに虚しくなる。
夜毎泣く。辛いから、悲しいから、しんどいから、どれも違う。ただ、布団にもぐって横になると自然と目から雫が零れる。心にぽっかりと空いた穴が何で埋まるのか。ずっと考えている。こんな毎日嫌だ。どこかへ行こうか。行く場所もないけれど、そうしよう。早くこの虚しさを消したい。そうすれば、きっと何か。何か変わるはずだ。
それから家を出て、電車に乗って、タクシーに乗って、遠くへ行った。見る人は皆、変わった見た目で、くろとは全然違った。獣のような耳や尻尾が生えていたり、耳が尖っていたり、人間とは言えない姿をしていた。くろと同じ人間の扱いをされていることを不思議に思っていた。今も。町をぶらぶらと、魔法使いを避けるように路地裏で過ごして、お腹が空いたらゴミ箱を漁って。まるで捨てられたような猫のように生活していた。自分から外に飛び出したはずなのに。
死にそうだった。空腹と、息苦しさ、疲労、全てが限界を越えていた。
――それから数日後、アグノマギアの人が神樹につれてきてくれたんだっけ。懐かしい。唯一、過去の記憶が蘇ってもいいと思える瞬間だ。本当にここに来れてよかったと思っている。心の隙間を埋めてくれるような人なんていないけれども。けど、前より、生きやすくなったのは確かな証拠だ。
冒頭に戻る。いずれ、この穴が埋まることを願っている。でも、本当の自分のことを言えないのは、きっと。
そんなこと無理だってわかってるから
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円藤 マメ(プロフ) - 菜の葉さん» ありがとうございます:) 褒められて照れる。リンク記載の件把握しました、よろしくお願いします!。 (2019年7月19日 19時) (レス) id: 3241387696 (このIDを非表示/違反報告)
菜の葉(プロフ) - 文才がヤバいですッ! クロちゃんの想いとか感情とか、すごい伝わってきます…! こちらの作品を、『リンク集』のところに載せさせていただきますね! (2019年7月19日 18時) (レス) id: 8971b2ec5c (このIDを非表示/違反報告)
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