【日差しと心の傾き】 ページ13
「ジャレッドおじさま!」
診療所に続くドアをあけながら、声を弾ませて彼の名前を呼ぶ。穏やかな微笑みを浮かべながら向かい入れてくれたのは、ジャレッド・フロウというおじさま。鍛え上げられた体故に、見た目こそ『怖い』なんて印象を持たれがちだが、それとは裏腹に実際はとても優しく温厚な人だ。今だって、くろのために茶菓子を用意してくれている。
「久しぶりだね」
「うん、最近はね――」
そう、ジャレッドおじさまと会うのは久々。数か月ぶりだろうか。起きた出来事がたくさんありすぎて、なにから話せばいいのか分からなかったけれど、くろは、最近自分の周りで起きた出来事をできるだけ嚙み砕いて話した。
イースターのイベントの話。これは、ジャレッドおじさまも窓から見ていたようで「壮大だったね」とイベントの様子の感想を教えてくれた。その感想を伝えようかとも思ったけれど、また用もないのに診療所に行ったことを知られたら面倒なことになりそうなので、ここで聞いた話は黙っていよう。
その後、数か月ほど仲違いしていた子と仲直りし、ちゃんと謝れたこと。途中で逃げてしまったけれど、それでも「よくがんばったね」と褒めてくれた。
外でお茶を飲んだこと。砂糖を入れすぎた話をしたら、適切な量を教えてくれた。多く入れても、角砂糖3つほどでいいらしい。
つい最近、璃雨お姉さまとカエルを飼い始めたこと。友達も多くなってきたことに、ジャレッドおじさまは、自分のことかのように喜んでいた。カエルの名前を話したら笑われたけれど「いい名前だ」と言ってくれた。
「それとね、物への意識がちょっと変わったかなあ」
いままでは、人に好かれるように、必死に嫌われないように生きてきたけど、ここの人たちはそうじゃなくても受け入れてくれることがわかってきたのだ。それでも抵抗はあった。不気味だと感じ、嫌う人がいるかもしれないと。ただ、少し、気持ちが楽になってきている。
「それはいいことだ」
にこりと笑いながら、そういうジャレッドおじさま。そのまま、お茶を一口飲むと話を続けた。
「人と関わるということは、時に色々なことを教えてくれるきっかけにもなるからね」
そうなんだ、と言いつつも、実際のところはあまり理解できていなかった。人と関わって教わることは、山ほどあるという。それでもピンとこなかったくろを見兼ねたのか、「いずれわかるよ」と笑い飛ばしてくれた。
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円藤 マメ(プロフ) - 菜の葉さん» ありがとうございます:) 褒められて照れる。リンク記載の件把握しました、よろしくお願いします!。 (2019年7月19日 19時) (レス) id: 3241387696 (このIDを非表示/違反報告)
菜の葉(プロフ) - 文才がヤバいですッ! クロちゃんの想いとか感情とか、すごい伝わってきます…! こちらの作品を、『リンク集』のところに載せさせていただきますね! (2019年7月19日 18時) (レス) id: 8971b2ec5c (このIDを非表示/違反報告)
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