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──幻影旅団が欲しがっている花冠は有名な美術家の妻が身につけていたとされている。その妻を描いた絵画を展示するために、花冠も展覧会に展示されるようだ。
美術館に運ばれている間に盗んでしまおう、というのがクロロの作戦だった。本来なら貨物飛行機に襲撃するみたいだったけれど私が協力することによって作戦を変更したらしい。
「車で行った方が早ぇだろ」
フィンクスの言う通り、アールグレイ家はこの繁華街を歩いた先にある一等地に屋敷を構えているが、空港は少し離れたところのある。
「じゃあ、あそこにいる人からもらっちゃおうよ」
シズクが指を向けた方に、運悪く車に乗ろうとしている人が一人。もらうという表現が正しいのかはさておき、無慈悲にも車を奪うことに成功した私たちは車に乗り込もうとしていた。
「フィンクスさんって、運転荒くないでしょうね？」
運転席に乗ろうとしたフィンクスに尋ねてみる。我ながら失礼な質問だったと思うが、意外にも彼はいつもと変わらないペースで答えた。
「文句があるなら自分でやれや」
「今免許証ないのよ」
「今更 法を守ろうとすんなよ……」
呆れた顔で言われた。ごもっともだが。もう既に車を強奪したというのに。それに、これから私たちは人の所有物を盗みに行くのだから、車を運転できる資格があるかどうかなんて些細な問題でしかない。
エンジンをつけてドライブにすると、交通の流れに乗って走り出した。
「──絵画を運び出すためだけにわざわざ特別に貨物飛行機を用意したってわけか」
それも複数、とフィンクスは続けた。車を駐車場に止めた私たちは空港の屋根に上ってやってくる飛行機を視察していた。
その間に、複数の飛行機がいっぺんにやってきたのだ。一度にたくさんの飛行機がやってくるなんて異様にもほどがある。まず怪しむべきだろう。
「どうする？ どの飛行機に乗ってるかなんて分からないよ」
「目当ての物がくるまで待つしかねぇだろ」
シズクの問いかけに、ため息をつきながらフィンクスが答えた。
人の手によって運び出されていく美術品を見据える。一機の飛行機自体にはあまり積んでいないのか、既に三機目の飛行機から荷物が運び出されていた。
でも、変な感じ。美術品というわりには二機目に運び出されたもの以外からオーラは──そこまで考えたところである事実に気がついた。
「待って。二機目以外、全部フェイクかも」
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