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アールグレイ家が襲撃されたというニュースを観ながら伸びをする。
……昨日の夜は散々な目にあった。疲労と寝不足で体が重いが、こんな状態が初めてというわけではない。ロキシィお嬢様の護衛をするなら長時間労働は当たり前だった。特に、ヨークシンシティで行われるオークションは大規模ということもあり危険な人物と出会う可能性だってある。どんな状態であれ気を抜かず護衛するのが当たり前だったからこんなことで弱音を吐く私はない。
それでも足取りが重たいのは、昨日の出来事がいまだに鮮明に焼き付いているからだ。
念のため、客室から出る時点で絶はして歩いてきた。昨日 集まっていた崩れかけたビルには入らず、その付近の物陰から様子を伺う。私が朝早く出てきたというのもあるが、ビルの中で待っている人は見当たらなかった。
彼らの"朝"は共通認識なのだろうか。息をひそめて旅団の誰かが来ることを待ち続ける。
私が愚直にあのビルに入らなかったのはただ、彼らをまだ信用しきれていなかったからだ。ついさっきまで敵同士だったはずなのにあっけらかんとして受け入れた。疑わないわけがない。……特に、団長といっていたクロロという男には何か裏がある。それも、団員である彼らも分からないような何かが……。そんな気がする、だけの話だが。
しばらく時間が経っただろうか。ビルにはシズク、シャルナーク、クロロの三人が既に集まっていた。さすがにもう入っても大丈夫だろう。実力差はあるかもしれないが、この三人に襲われても命は助かる気がしたから。ゆっくり絶を解除してビルに近づいた。
「早いな」
ビルに入った私に、クロロから投げかけられた最初の言葉だった。
「職業病よ」
「いつ来たんだ？」
「……今、来たじゃない」
「そうか」
彼は軽く笑いながら目を伏せた。今日は前髪を下ろしていて、昨日よりか若々しく見えた。
どこにいればいいか迷った結果、できるだけシズクに寄って待つことにした。クロロから勧誘されたときも、特に何の反応もせず真っ先に声をかけてくれたから……という単純な理由であるが。
「そんなに気を張って疲れないの？」
「疲れないわよ。ちゃんと休めるときに休んでるから」
「へえ」
いきなりシャルナークに話しかけられたものの、平常心で答えることができた。
しかし、それ以降誰かがしゃべるということはなく、ただ他のメンバーを待つだけだった。
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