耳元で歌わせて (赤) 3 (ページ2)

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Aちゃんは和室の電気つけて

仏壇から小さな湯呑みと

供えてあった花を取った

そのまんま台所戻って

ＩＨにやかんかけたら

湯のみ洗ろて

花の水換えて

お湯が沸いたらちゃんと急須つこて湯呑みにお茶入れてた

お盆にお茶と花のせて、それ持って和室へ

俺はちっちゃい子がお母さんの後ついてまわるみたいに

Aちゃんの後ろから和室に入る

お茶とお花をお供えしたAちゃんは

ろうそくと線香に火をつけて

静かに手を合わせた

俺も誰か分からへんけど

でもAちゃんをこの世に送り出してくれた人らには違い無いし

Aちゃんの斜め後ろに座って手を合わせて

心ん中で

『渋谷すばるです』

『よろしくお願いします』

って言うた

手を解いたAちゃんはそんな俺を振り返って

寂しそうに笑った

ゆっくり立ち上がったAちゃんの後に続いてリビングに戻る

｢すばるくん、お茶飲む？｣

そう言うて台所に行こうとするから慌てて止めてソファーに座らせる

｢水だけ言うた｣

そう言うたらAちゃんは

｢そうでした｣

って笑てくれた

そのまんま座ってくれるんか思たAちゃんやったけど俺の方向いて

｢すばるくん…シャワーお先にどうぞ｣

って

｢使わせてもろてもええの？｣

って俺が聞いたら

｢･･･お湯はってあげられへんけど･･･｣

って俯いてしもた

｢それは平気｣

そんな仕草に触れることなく

普通に返事する

Aちゃんは顔あげて

｢ごめんね｣

｢こっちにどうぞ｣

そう言うてお風呂まで案内してくれた