03-2 ページ8
うらた「出かけよう、」
突然そう言ってソファから立ち上がる彼。握られたままの手は必然的に宙に浮いて、重力を感じる。
うらた「行こう。」
A「っ、ちょっとまって…！」
うらた「ん、携帯だけで十分。」
そう行って振り返った彼はテーブルの上に置いたままだった私の携帯を渡してくる。
A「あっ、え、」
頭が追いつかないまま玄関まで連れてこられて、よくわからないまま、とりあえず靴を履いた。
彼がこんなに衝動的に動くのは珍しい。
何を考えてるのか私にはさっぱりわからないけれど、とりあえず手は繋がれていて、横を歩く彼の口元は若干微笑んでいるようにも見える。
うらた「先に席とってて。」
A「あ、うん。」
連れてこられたのは最寄駅にある某コーヒー店。
彼が好きでよく行ってるので、私も付き合い始めて必然的に行く回数が増えた。
この店も最寄駅にあるということもあって店員さんは顔見知りばかりだ。
A「…ここでいっか。」
テーブル席も空いていたけど、カウンター席へ。いや、なんか、気分的に。
今の私には彼の顔をまっすぐ見るのは難しそうだし。
うらた「おまたせ。」
その言葉と同時に私の前にはいかにも美味しそうなクリームの乗った飲み物が。そして彼の手にも同じものが。
うらた「飲んでみ？」
A「えっ、、お金……あ、財布…」
しまった、私は生憎携帯しか持ってない。
うらた「そんなんいいから、ほら。」
A「っ、…いただきます、」
あとで払います、そう言葉にしようとした時。
彼は手に持っている飲み物のストローを私の口元に差し出した。
素直にそれを咥えて吸うと、甘い桃の味と香りが口の中に広がった。
え、ちょっとこれは、、、
A「…うま、」
うらた「だろ？絶対今回の新作、Aが好きだろうなって思ってたんだよ。」
そう言いながら彼自身も飲んで、やっぱうめえ、なんて零している。
A「…ありがとう、」
うらた「別に、いつか飲ませたいと思ってたし。」
ふわっと頭に感じる温もりは、あまり大きくはないけれど、男らしい彼の手から伝わってくるもので。
隣を見ると目を細めて笑ってるもんだから私の胸は高鳴ってしまう。
少なからず、先ほど別れ話をしたというのに、私はこんなに好きなんだと実感させられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2393人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちご丸 - キヨさんの続きは！？ (9月23日 0時) (
レス) @page23 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
りーな(プロフ) - 文才凄いですね！？天才ですか！？坂田さんので泣きました(ガチです 更新頑張ってください！！ (2022年11月14日 8時) (レス) @page23 id: 58a7f79ac7 (このIDを非表示/違反報告)
汐乃(プロフ) - キヨさんのだけでも投稿して貰えないですかね…？めちゃくちゃ続き気になってます…！ (2021年7月17日 21時) (レス) id: d40f4a1ac2 (このIDを非表示/違反報告)
田舎女子 - キヨさんの続きめっちゃ気になります！！よければ、更新してほしいです！ (2021年6月5日 16時) (レス) id: 67e9a9c4e5 (このIDを非表示/違反報告)
瑞姫(プロフ) - キヨの話の続きがとても気になります！更新はもうされないのですか？(T_T) (2020年11月12日 7時) (レス) id: ec711c6353 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のの | 作成日時：2018年5月31日 18時
