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06-2 ページ19

A「坂田くん、別れよ。」

坂田「…え?」


生まれた沈黙の中に、一言。
坂田くんはだいぶ経って困惑の声をもらした。
あなたは悪気がないのはわかってる。
でも、そんなあなたを許せない自分が嫌い。


坂田「なんでなん、」


バタッと冷蔵庫が閉まる音がして、再び彼は私の顔を覗き込む。
目を合わせないように必死に逸らして、浮かびそうになった涙を堪える。


坂田「A…?なんかあるんなら言ってや…」

A「もう、いい。」

坂田「お願いやから、」


そのままぎゅっと彼の腕の中に抱きしめられてしまって、頭を撫でられる。
いつもは子どもっぽい彼が、こうして大人になる瞬間に私は弱い。
彼はそれを自覚しているのか知らないけれど。


坂田「とりあえず座ろか、」


彼の腕の中で涙を流しながらだんまりを決め込む私。
しばらくそのままでいたものの、そんな私を見かねたのか彼からの提案。
それに小さく頷いて、彼の手に引かれるままにソファに座った。


坂田「俺がまた無意識にやってもうたんやろ、、ごめんな。でも俺分からんねん。やから、話してくれん?」


やけに弱々しい声に少しだけ顔を上げると、弱った犬みたいにしょんぼりした顔の坂田くん。
私の手を優しく握って、目を見つめてくる。
真っ直ぐすぎて、引き込まれてしまいそう。


A「昨日、」

坂田「昨日?」

A「なんの日だったか、分からない?」


彼にヒントを伝えれば、カレンダーに目を向ける。


坂田「…あっ…っ、」


日付を小さく口にしたあと、想像以上に大きな声で驚きを露わにする。
これは、気付いてくれた…?


坂田「ごめん!!!ほんっまにごめん!!!」


深く考える間も無く、握られた手により強く力が加わって、さらに頭を下げる彼。
無駄な言い訳をするでもなく、すぐに謝ることができるところは彼の長所だと思う。


坂田「待っててくれたんやろ、あんないっぱいご飯作ってくれてたんやろ、、」

A「…うん、」


頭を下げたままの彼の表情はわからないけれど、きっときっと泣きそうな顔をしてると思う。
いつだって、無意識に私を困らせた後の彼はそうだった。
近くにあるつむじを見つめながらそんなことを考えていると、突然勢いよく立ち上がった彼。


坂田「A、ちょっと待っとって。」

A「え、」


おらんくなったらあかんで、とドアの前でもう一度言って、部屋着のまま家を出て行ってしまった。

06-3→←06-1 * となりの坂田さん



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作品ジャンル:恋愛
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いちご丸 - キヨさんの続きは!? (9月23日 0時) (レス) @page23 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
りーな(プロフ) - 文才凄いですね!?天才ですか!?坂田さんので泣きました(ガチです 更新頑張ってください!! (2022年11月14日 8時) (レス) @page23 id: 58a7f79ac7 (このIDを非表示/違反報告)
汐乃(プロフ) - キヨさんのだけでも投稿して貰えないですかね…?めちゃくちゃ続き気になってます…! (2021年7月17日 21時) (レス) id: d40f4a1ac2 (このIDを非表示/違反報告)
田舎女子 - キヨさんの続きめっちゃ気になります!!よければ、更新してほしいです! (2021年6月5日 16時) (レス) id: 67e9a9c4e5 (このIDを非表示/違反報告)
瑞姫(プロフ) - キヨの話の続きがとても気になります!更新はもうされないのですか?(T_T) (2020年11月12日 7時) (レス) id: ec711c6353 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:のの | 作成日時:2018年5月31日 18時

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