3話 ページ4
あぁ、いい。他の先生とは違う。高過ぎず、低過ぎない声。無駄に大きいわけでも小さすぎるわけでもなく、落ち着いていて、よく響く。
高柳「倫理は、学ばなくても将来困る事はほぼ無い学問です」
少し生徒達が驚く。
確かにそうだ。地理や歴史の様に生活する上で触れる事は多くないし、数学のような凡庸性も英語のような実用性もない。
高柳「この授業で得た知識が役に立つ仕事はほぼ無い。この知識がよく役に立つ場面があるとすれば
__死が近づいた時とか」
ぞっ、と背中に何かが走った。高柳先生は時々、凄いことを言う。
高柳「倫理は主に自分がひとりぼっちの時に使う。信じられるものがなくなった時、死が目前に迫った時。人は宗教による救いを求める。“宗教とは何か”」
黒板に綺麗な文字が書かれていく。書こうか迷った右手を机の上に戻した。
高柳「人間関係がうまくいかない。他人を羨んで妬んで上手く生きる事が出来ない。“よりよい生き方を考える”」
先生の言葉が一つ一つ染み込んでいく。
高柳「悩みが絶えず苦しい…憂鬱…私は何の為に生きている?昔の科学者たちは生涯をかけ悩み続けた。“幸せとは何か”」
机の端に置いた哲学の本を一瞥する。
高柳「男はこうあるべき、とか女はこうしなきゃダメ、とか…そんな事誰が決めた?“ジェンダーについて”」
振り返った高柳先生と目が合う。
高柳「死にたい…“いのちとは何か”」
高柳先生をじっと見つめかえした。
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ももた。(プロフ) - 面白かったです続きが気になります! (2021年4月1日 2時) (レス) id: 485f6e79f8 (このIDを非表示/違反報告)
hiroakannna(プロフ) - お初です。ここは今から倫理です。自分も好きです!この小説が少し前から更新停止なのが残念です。もし出来たらでいいので続きが読みたいです。お願いします。 (2019年9月19日 15時) (レス) id: bc274ad562 (このIDを非表示/違反報告)
李虎。(りこ)(プロフ) - オリジナル作品タグ外した方がいいと思います。 (2019年4月28日 7時) (レス) id: 8440b613e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kiyo | 作成日時:2018年8月18日 22時