【歌い手】ひ と り ぼ っ ち 解 消 法 。【シェアハウス】

にじゅうろく ページ26

家に帰ると、4人で大きく「ただいま」と挨拶。

そういや、小さい頃からこうやって帰ってきたことはなかったな…

「ただいまかえりました。」って小さく呟いて自室に戻るだけの日々…

まぁ、学校以外に家から出ることはほぼ無かったんだけども。

伊「あ、ほわほわしてる。」

…おっと。多分間抜けな顔してたんだろうな…。

緩んだ気持ちをなんとか引き締める。

リビングにいるみんなに挨拶しながら“あの人”がリビングにいないことを確認して、

私はそくささと自室へもどった。





荷物を置いて、一度深呼吸してから部屋を出る。

リビングにいないってことは、自室か、防音室か、奥にある本がいっぱいある部屋かな。

自室に行ってみたけど返事はなくて、とりあえず近くにある本の部屋に入る。

貴「…！(居た…！)」

窓から覗く夕日に照らされて本を読んでるその姿が目に入った。

真剣に本を読む姿に、高校1年から変わらないな。と呑気なことを思ってしまい首を振った。

部屋を出る前にしたように深呼吸して、部屋に入った。

あの頃と同じように短く折られたスカートに、

いかにも大人しそうな耳の下で結ばれた二つの毛束。

不自然にならない程度に内股気味の足。

……その全てに不釣り合いな歪んだ口元。

貴「ねぇ



上田創くん。ちょっといいかな？」


あの時と一緒の窓際の席で、

あの時のように君の左横に立って、

あの時と同じようにあなたの名前を呼んだ。


S「……いーよ。」

あの時と違うのは、あなたのすべて見透かしたようなその目だけだった。

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