ワンピース /os ページ10
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薄暗い六畳のリビング
紺色の色褪せたカーテンから射し込むぼんやりとした光が朝を告げた。私はそっと音を立てないよう小さな布団から手を伸ばし、枕元に置いてある目覚まし時計を見る
AM 5：39
一睡も出来なかったと言えば、彼は笑うだろうか。
馬鹿だなぁって、舌っ足らずに言うだろうか。
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『...やだ？』
「なにが」
『初めてなんて』
「なんで」
『さとしくん経験豊富でしょ』
「そーだけど」
『否定してよ』
「関係ねえじゃん。そんなの」
『...』
「ハジメテだろうがハジメテじゃなかろうが」
「AはAじゃん」
「おれは、Aがすきなの」
「わかった？」
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数時間前の、彼の声が今でも鮮明に頭に流れる。まるで、映画でも観てるみたい。
でもまさか、この映画の主人公が私だなんて信じられなくて、薄暗い、六畳のリビングで私、何故か分からないけど、少し泣いた。
「ん、...」
今も隣で眠る幼い寝顔。その頬をそっと両手で包み込んで小さくキスをする。
初めての私からのキスは、私の涙でしょっぱくて、なんだか余計泣けた。
「...しょっぺ」
なんて、寝てたはずの彼が可笑しそうに笑うまでは。
『...』
「なんて顔してんの」
『ばか』
「おれが？」
『起きてたなら言ってよ』
「なんで」
『なんでって！...もう、ほんと嫌い』
「は、」
床に乱雑に敷かれた小さな布団の中、私は彼に背を向ける。
少しの間の後、何も言わずやってきた背中からの体温にも、触れるのが布ではなく肌と肌である事にも、一つ一つに驚いてしまって、肩越しに小さく笑い声が聞こえた。
「起きんの、早ぇね」
『...そう？』
「ん」
『......』
「...」
「ね、ほんとは？」
ああ、やっぱり、智くんには何でもお見通しなんだ。って。
『.........寝れなかったよ』
「うん」
『一睡も出来なかった。』
「うん」
『智くんの事考えてたら』
『朝になってた』
「...ん、」
ガサ、とシーツの擦れる音
耳元で聞こえる小さな吐息
それだけが響くこの古いアパートの一室が、私達、二人だけの、世界で。
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ウタ(プロフ) - 愛梨さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。励みになります。これからもマイペースに頑張ります！ (2020年1月5日 18時) (
レス) id: 2132398f2b (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - はじめまして。どのお話もとーっても面白くて大好きです。更新大変だとは思いますが頑張ってください。応援してます。 (2020年1月5日 14時) (レス) id: f7e12740e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウタ | 作成日時：2019年1月31日 21時
