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『...さく、らいくん』
声を振り絞って呼んだ彼の名前は、周りの歓声にかき消された。
どうして、どうしてあんなに苦しそうな顔をしたの？少し掠れた声で言ったごめん、その声が頭の中でループする。
結局私はその後、料理もお酒も喉を通らず適当な理由を付けて店を出た。
・
そして、今に至る。
三年間想い続けた私の恋を、あんなにもあっさりと、お酒の力で、いとも簡単に折られてしまった。
斜め向かいのデスクに座る同期の櫻井くんに一目惚れしたあの日から、
毎朝のおはようの挨拶
たまに貰うお菓子のお裾分け
一度だけ勇気を出して誘ったお昼ご飯
彼に恋してた日々はいつもキラキラ輝いていて
毎日が楽しかった。
そんな日々が、もう。
「...っAちゃん！」
トクン、また心臓が飛び跳ねる。背中から聞こえたのは、私の大好きな声。
「はぁ...はぁ...はぁ、Aちゃん...」
「ごめん、ほんとにごめん」
そっと近付いてきた声が、ピタ、と私の後ろで止まる。
『ごめん、私、泣いてるから...、こんな顔見せられない』
「...」
人通りの少ない道の真ん中。
隣を通る車の音だけが響くこの空間で、布と布の擦れる音と共に、
私は、彼に抱き締められた。
『っ...！』
「ごめん、顔見ねぇから。聞いてほしい。」
彼の声が続く。
「さすがに止めとこうって思ったんだよ、酒も入ってたし、」
「でも...」
「こうでもしないと、俺このまま何も出来ないまま終わっちゃうんじゃねぇかって。」
まだ言葉の意味を理解出来ない私に、
彼は参ったように頭を掻いて、
「好きだよ、Aちゃんが。」
って。はっきりとそう言った。
思わず顔を上げた私。
優しくこちらを見る彼と目が合った。
「顔ひでぇな、(笑)」
『あっ...、』
「ふっ、嘘だよ」
『ん、...！』
二度目の、キス。
蕩けるような甘さのキスは、夏の夜にぴったりだった。
「よし、...改めて。」
「俺と、付き合って下さい。」
火照る頬は、冷めることを知らないようだ。
end.
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ウタ(プロフ) - 愛梨さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。励みになります。これからもマイペースに頑張ります！ (2020年1月5日 18時) (
レス) id: 2132398f2b (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - はじめまして。どのお話もとーっても面白くて大好きです。更新大変だとは思いますが頑張ってください。応援してます。 (2020年1月5日 14時) (レス) id: f7e12740e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウタ | 作成日時：2019年1月31日 21時
