一目惚れ /os ページ27
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どうして、だろう。
土曜日の午後三時。比較的人の多い時間帯。
時間潰しのためにふらりと入った喫茶店の中で何故か、私は彼から目が離せなかった。
窓際の席に座っていたその人
外から差し込む日の光に照らされた横顔は、思わず息を飲んでしまうような美しさだった。
手に持った文庫本のページを一枚づつゆっくりと捲るその指に。突然テーブルの上で震えたスマホを手に取り、電話先の相手に話すその優しい声色に。
きっと、一目惚れというものをしてしまった。
「ん、じゃあ。」
コトン、と彼のスマホが元の場所に戻される。どうやら電話は終わったようだった。
出来るのであれば、このまま時間の許す限り遠くから眺めていたい。そう密かに思っていた。その、ほんの二秒後。
パチン、
驚く程に、自然に。
驚く程に、真っ直ぐに。
ゆっくりと顔を上げた彼の視線が私の瞳を捉えた。
『...』
「...」
二人共何も言わなかった。けれど目を逸らす事もしなかった。
その距離、およそ5メートル。
「どうも」
きっとそう言ったんだと思う。
その三文字だけを放ったその唇が、次は分かりやすいように、
「ここ」
って、彼の向かいの椅子を指差して言った。
私が、飲みかけのミルクティーと鞄を手に取って席を立つのに一切の迷いはなかった。
名前も知らぬその人に、理由は無いけれど、どんどんと惹き込まれてゆくようで。
『失礼、します』
「ん、どうぞ」
ん、って。この鼻に掛かるような声、好き。
『……すみません、』
「いや、ぜんぜん」
笑う時少し俯くの、好き。
「なんか、目離せなくなっちゃったんだよね」
あまり感情が読めない瞳、好き。
『お名前、伺っても良いですか。』
「おおの、さとし」
「そちらは？」
『A、です』
「へえ、Aちゃん」
私の名前をゆっくりと繰り返すその声は、さっきの電話の声よりも少し優しくて、甘く蕩けそう。
「俺ね、ふだん全くこういうのしねぇんだけどさ」
『……』
「これ逃したらぜってぇ後悔すんなって思って」
手元の、既に氷が溶けきったアイスコーヒーを掻き混ぜながら少し笑ったさとしさんは、
「……Aちゃんさ、良かったらでいいんだけど」
「この後、時間ねぇかな」
って、あの吸い込まれる様な澄んだ瞳で、私の目を見て言った。
恋が、始まる予感がした。
愛が、始まる予感がした。
あ、意地悪く笑うその笑顔、好き。
end.
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ウタ(プロフ) - 愛梨さん» ありがとうございます！とても嬉しいです。励みになります。これからもマイペースに頑張ります！ (2020年1月5日 18時) (
レス) id: 2132398f2b (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - はじめまして。どのお話もとーっても面白くて大好きです。更新大変だとは思いますが頑張ってください。応援してます。 (2020年1月5日 14時) (レス) id: f7e12740e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ウタ | 作成日時：2019年1月31日 21時
