【ut】徒然なるままに【完結】 (ページ9)

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sideーut

ut「もう梅雨やねぇ」

「ほんとだね、いつまで続くのかなぁ」

2人で歩く帰り道、身長の差を考慮して俺が傘をさしている。そんなに大きな傘では無いため自然と距離が近くなる

「あ、お母さんが言ってたんだけど、今年も夏祭りやるんだって！」

ut「ほんま？あの花火上がるヤツやろ？」

「そうそう！すっごい綺麗なんだよね！」

年に一日だけ、近所で夏祭りがある。付近を車両立ち入り禁止にして盛大に行われるそれは、最後には花火も上がる大規模なもの

Aちゃんのことやから、皆で行こうって提案するんやろな。ええ子やし

「それでね、そのお祭りなんだけど、

2人だけで行かない？」

え？

隣に視線を移すと、俯きがちのAちゃんの姿。今、Aちゃんから2人でって

ut「…ええの？」

「う、鬱くんが嫌じゃなければ、！」

ut「嫌なわけないって！ただ、ほんまに俺と2人でええの？」

「私は、鬱くんと二人がいい、かな…」

お互い、それ以上の言葉が出てこなかった。雨音だけが響く傘の中。あっという間にAちゃんの家の前についてしまった

「また明日、ね」

ut「せやね、また明日」

傘を手渡し、隣の自分の家まで駆ける。雨に濡れた右肩の水気をはらい、玄関の扉に手をかけた

やばい、めっちゃ嬉しい、まさかAちゃんからあんな誘いが来るなんて、

にやける頬をつねると痛みが走り、これが夢ではなく現実だと知らせる

「はよ夏にならんかな」

湿り気のあるリュックから教材と折り畳み傘を取り出し、ポツリと呟いた