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sideーut
ut「おー、昔と変わらへんなぁ…」
「ほんとだ、遊んでた時と変わらないね」
辿り着いた神社は昔と何ら変わらない。強いて言うなら、子供の頃と大きくなった今では目線の高さが変わったくらい
想定通り人気のない神社の石段に2人で腰掛け、街を見下ろす。一際明るいのが祭り会場で、今もまだ賑わっている
ut「そういや、何で今年は2人やったん？俺としては嬉しいけど、Aちゃん優しいからみんなで行こうってなると思ってん」
「えっ、と…」
ずっと抱いていた疑問に、Aちゃんは少し戸惑った後に答えてくれた
「来年、受験生になっちゃうし、来れるか分からないから…昔みたいに、二人で来たかったの」
ut「え、」
「もちろん、来年も来れたら来ようね！」
そんな後付けに喜ぶ暇なんてない、Aちゃんが昔のことを覚えていてくれた、俺だけやなかった、それがどうしようもなく嬉しかったんだ
ut「俺な、Aちゃんのことめっちゃ好きやわ、もう10年は恋してんで」
「ど、どうしたの急に…！」
ut「片想いでもええねん、ほんまにAちゃんのこと好きなんよ。昔から可愛くて、綺麗で、凛としてて」
「も、もういいって…！恥ずかしいから…！」
ut「恥ずかしがり屋も昔からやね」
ちょっとしたからかいにぺし、と袖で叩かれる。力のこもっていないそれと、街の灯りに照らし出された真っ赤な顔が、とても可愛かった
ぐしぐしと顔を擦ったAちゃんは、まだ紅みの残る顔をこちらに向けて口を開いた
「鬱くん、私ね──」
その声に重ねるように、夜闇を切り裂くように花火が打ち上がる。けたたましい音を立てて夜空に咲いた花は、粒となって散りゆく
ut「Aちゃん、今なんて」
「ううん、なんでもない、！」
遮られてしまった言葉を聞き返しても、なんでもないとはぐらかされてしまった。何を言ったのか、何を伝えたかったのか、本人がなんでもないというのなら引き下がる他ない
今は、目の前の花火をAちゃんと一緒に楽しもう。そう思い、石の上に投げ出された小さな手を自分の手で包み込むと、ゆっくりと握り返してくれた
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作者名：椿 | 作成日時：2021年5月10日 0時
