○ ページ30
.
「...キス、して、くれませんか、」
「これで、最後にするので、忘れますから」
震える唇を必死に動かした。
.
それならせめて
先生の記憶に残りますように。
私の気持ちを知ってしまった先生だけは。
そんな簡単に忘れられるはずもない、
最後になんて出来るはずもない、
嘘をついた私を、先生も忘れませんように。
先生、私はちっとも偉くなんてないんです。
振られた今でも、嘘に縋るくらい
先生にとって、気持ちの悪いことを言うくらい
先生のことが、好きなんです。
.
『...ん、分かった』
私の好きな、笑顔を浮かべた先生。
頬に手を添えられて
整った顔が近づいてきた。
目を瞑ると、優しく触れた唇。
それは一瞬だったけど、私には長く感じた。
.
ごめんな。
小さく呟いた先生は
私の頭をそっと撫でた後、出ていった。
.
「...苦い」
生徒の私が手の届かないくらい
先生は大人だった。
それでいて、優しかった。
「...苦しいよ、せんせい」
でも、その優しさが、苦しい。
私のことが好きじゃないなら
振るくらいなら、断れば良いのに。
好きなのに、憎い。
そんな先生が、好きなのに、嫌い。
こんな私の気持ちを、本当に大人は
憧れなんて言うのだろうか。
.
「...優斗先生、好きです」
一人きりになってしまった教室に
私の声が響いた。
ポタリ、頬に水滴が落ちて
何だか分からない、涙が溢れてきた。
私の、散ってしまった小さな恋心。
叶わなかった、私の初恋。
.
初めてのキスは、煙草の味がした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 304人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あい(プロフ) - ひまぽんさん» ひまぽんさん、コメントありがとうございます* 。続編などは少し検討させて頂きますね、これからも宜しくお願いします...！ (2019年3月25日 0時) (
レス) id: 0f506228be (このIDを非表示/違反報告)
ひまぽん(プロフ) - 龍我くんの話の続きが読んでみたいです。那須くんサイドの話も読んでみたくなりました。他の作品も楽しみにしています。 (2019年3月25日 0時) (レス) id: aeeb4a860b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あい | 作成日時：2018年9月9日 21時
