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太陽の光が木々の隙間から見えて、
家を出てからそんなに時間が経過したのかと
呑気に考える。
手に持っていたじゃがりこの箱の中身は
もう空っぽで、また私達の間に静寂な空間が広がった。
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徐ろに彼が立ち上がった。
それにつられるように私も立ち上がって
その先の橋の上に足を踏み入れた。
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橋の下には、勿論川が流れていて
ここからかなり高さがある。
落ちたら、死んじゃうね。
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「え、」
彼の声が聞こえて、思わず彼の方を見た。
「また、おんなじだ」
ふふ、と彼の口角が上がる。
ほんとだ、と私も微笑んで彼を眺めた。
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私達は、どこまでも、
何もかもが一緒みたいで。
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本当は分かっていたんだ。
「僕達の事、誰も知らない所で二人で居よう」
私達が真夜中に家を出た、きっかけの言葉。
彼の言葉の本当の意味を。
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必要なものを全て詰め込んだリュックなんて
これから役に立つことなんて無い。
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あの時。
子供の頃に感じてた、橋の上の恐怖。
危ないから早く渡ろう、と彼が手を引いてくれた。
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今はもう恐怖なんて無い。
今度は彼が、違う意味で手を引いてくれる。
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太陽の光が私達を照らす。
私達は、確かに、この世界に存在していた。
私は彼が、好きで、大好きで。
これからも、多分ずっと。
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だからね、
お母さん、お父さん、今までありがとう。
ごめんね。
あと、
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「......飛貴、愛してる」
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物凄い速さで目の前に広がる青色が
彼の顔で遮られた。
ぎゅっと込められた力。触れた唇。
私の最期の記憶は、
「...A、愛してるよ」
彼の、声だった。
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あい(プロフ) - ひまぽんさん» ひまぽんさん、コメントありがとうございます* 。続編などは少し検討させて頂きますね、これからも宜しくお願いします...! (2019年3月25日 0時) (レス) id: 0f506228be (このIDを非表示/違反報告)
ひまぽん(プロフ) - 龍我くんの話の続きが読んでみたいです。那須くんサイドの話も読んでみたくなりました。他の作品も楽しみにしています。 (2019年3月25日 0時) (レス) id: aeeb4a860b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あい | 作成日時:2018年9月9日 21時