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時計の針が午前零時を過ぎた頃。
必要な物を全て詰め込んだリュックを背負って物音を立てないように静かに部屋を出た。
『もう、遅いよ』
既に玄関には私と同じ様にリュックを背負って立っている人がいて。
小声で少し怒ってみせた彼に
ごめんね、と謝り掛けよれば
怒ってないよ、とすぐに笑ってスルリと指先を絡めてきた。
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ガチャリ、玄関の鍵を閉める音がした。
鍵を握っていた彼の大きな手を眺めていた。
『よし、行こっか』
その声に導かれるように結ばれた手を引かれて歩き出す。
振り返れば、もう戻ってくる事はないだろう生まれた時からお世話になった家。
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すぐに視線を逸らして前を向いた。
きっともう戻ってこれない。
いや、戻らないと決めた。
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気づかれないように、そっと隣の彼を盗み見ようとすると、同時に顔がこちらを向いて視線が絡み合う。
『ふふ、同時だね』
うん、と零せばそれは自然と笑みに変わって
アハハ、とまた二人同時に声を出して笑い出す。
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私達は、似ている。
生まれた時から何をするにも
ずっとそばにいて
お互いの考えている事が息をするように分かる。
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以心伝心。
そんな素敵な言葉で括る事が出来たら良いのだけれど。
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彼が好き。
いつの間にか芽生えたこの気持ちは
簡単に口に出せる事では無かった。
愛しい。
ずっと一緒にいたい。
苦しいくらいに想う気持ち。
そして、それをやっぱり彼も
私に対して抱いていた。
こんな時も私達は繋がっている。
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私達は、両親が愛を育んだ証。
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私達は、血の繋がった双子。
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私達は、禁忌。
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あい(プロフ) - ひまぽんさん» ひまぽんさん、コメントありがとうございます* 。続編などは少し検討させて頂きますね、これからも宜しくお願いします...! (2019年3月25日 0時) (レス) id: 0f506228be (このIDを非表示/違反報告)
ひまぽん(プロフ) - 龍我くんの話の続きが読んでみたいです。那須くんサイドの話も読んでみたくなりました。他の作品も楽しみにしています。 (2019年3月25日 0時) (レス) id: aeeb4a860b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あい | 作成日時:2018年9月9日 21時