愛するとは【探鉱者】 (ページ22)

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｢気になる？｣
｢えっ｣

突然そんな事を囁かれた。

キャンベルさんにじっと見据えられる感覚にドギマギと心臓を潰される感覚を覚えた。

…気になる。

気になるに決まっている。

キャンベルさんのことなら、なんでも知りたい。

その靄に隠された内側を暴いてみたい。

門前雀羅を張る如くひっそりとした彼に足を踏み入れたい。

｢別に、毎日炭だらけで汚いだけの普通の炭鉱夫だったよ。｣
｢…ああ、でも誰よりも真面目に仕事をしていた自信はある。｣

早くお金持ちになりたかったし、と付け加えられた台詞から感情は読み取れない。

キャンベルさんは相変わらずどこまでも殺風景だった。

｢炭だらけのキャンベルさん、見てみたいですね。｣
｢…はぁ……？｣
｢なにそれ、馬鹿にしてる？｣
｢し、してません…！｣
｢…ただ、どんな感じだったのかなぁって……｣
｢いやほら、俺、キャンベルさんのこと何も知らない…｣

肝を冷やす返答に慌てて訂正を挟む。

キャンベルさんって意外と卑屈的と言うか、旋毛曲がりの性格をしていると思う。

以前した会話を思い返す。

硝子のナイフを携えた血の如きドレスを纏う彼女の話をした時だった。

キャンベルさんは唾を吐き捨てるように｢ああいう人達って僕らのことどう思ってるんだろう。…ドブネズミとでも思ってるのかな｣と眉を静かに潜めながら呟いた。

あの時は丁度ゲームに負けて皆臍を曲げていたし、あまり深く考えないようにしていたが、あの発言もまたノートン・キャンベルと言う人間を映し出す鏡だったのかもしれない。

｢…別に、知ってもなんの得にもならないよ。｣

ああ

キャンベルさんをこんな陰鬱に沈ませてしまう原因はなんだろうか。

貧困を極めた環境？

旗また、労働のストレスから？

それとも、その熱傷が原因？

知れば知るほど欲は肥大化し、まるで辞められない薬のようだった。

いつか、キャンベルさんの全てを知りたい。

｢そうですか？他でもないキャンベルさんのことなら、きっと俺の財産になる。｣
｢…何が目的…？｣
｢え？いやいや、目的なんてないです。ただ貴方のことが知りたい！｣
｢……理解できない。おかわりは？｣
｢あ、お願いします。｣

こうして夜は更けていく。