第九話 ページ14
次に移動した寮は吸い込まれるような青藍色が広がっていた。
眠気を誘う落ち着いた雰囲気のある穏やかな空間だが、返ってそれが狂気的にも感じた。
それにしても、まるで海の中を歩いているかのようで、一瞬息を忘れてしまう。
呼吸に重きを置く鬼殺隊とは、まるで反対だな、なんて考えながら寮内へ入っていった。
「…おや、ここに私服の生徒がくるなんて_」
「…ああ、いや、失礼致しました。もしかして貴方が護衛の影壱A様ですか?」
扉を開けて出迎えてくれたのは銀髪系の髪を揺らす貼り付けたように笑う青年だった。
横には180をゆうに越えているであろう体躯のいい双子の兄弟が佇んでいた。
「……そうだ。お前は」
「ああ、お会いできて光栄だ…!お待ちしておりました、影壱A様!」
「……」
…
……は?
「名も名乗らず失礼致しました。嬉しくてつい」
「…僕はアズール・アーシェングロット。このカフェの経営者であり、オクタヴィネル寮の寮長を務めています。」
「こっちは副寮長のジェイド、こっちは双子の兄弟のフロイドです。」
紹介された双子の片方には会釈をされ、片方にはよろしくねぇと手を振られる。
……なんだ、こいつ。
「改めてよろしくお願いしますね、Aさん」
大袈裟な程に声を上げ、釘を刺すかのように名を呼ばれる。
…なんだ、こいつ。
狡猾な態度がやけに鼻につく。
隠しきれていない老獪な1面がチラついて鬱陶しい。
「藤の花の護符を配りに来ただけだ。」
「寮生全員分ある。あまりは敷地内にばらまいておけ。」
「ああ……っ!なんて慈悲深い……!」
箱をジェイド、と呼ばれた青年に手渡す間も、相変わらず値踏みするような視線を遠慮なく向ける。
背筋を這う不快感に、反射的に体が動いてしまう。
俺はアーシェングロットと一瞬にして間合いを詰めると、襟巻きを掴みあげた。
「……くどい。」
突然の事で驚きからか恐怖からか肝を潰した顔をして固まっている。
…そちらの方が年相応の表情をしていて余っ程可愛らしいと思う。
「……では」
そして俺は逃げるようにその場を去った。
___
「え〜消えたんだけどぉ!はっや!カジキじゃーん!」
「…お灸を据えられてしまいましたね?アズール。」
「……そんなんじゃありません」
「アズール、カジキくんに怒られてたねぇ」
「〜〜〜っ、だから、そんなんじゃ!ありません!!」
「次は絶対!上手くやります!」
「あはっ♡うける〜」
「おやおや…」
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白帽子(プロフ) - シャリファさん» 本当ですか…!嬉しいです。では更新していく方向で考えていきます。また、長らく更新お待たせしてしまい申し訳ないです… (3月12日 6時) (レス) id: f1b6561477 (このIDを非表示/違反報告)
シャリファ(プロフ) - めちゃ需要あります!この小説面白くていつも楽しみにしてます (3月12日 3時) (レス) @page12 id: d94d66ff3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白帽子 | 作成日時:2021年5月26日 13時