第八話 ページ13
荒野の草原を思わせる乾燥した空気が肌を触る。
一帯が獣特有の匂いで包まれた非日常の環境に、普通の人であれば好奇心を擽られたり、怯えたりするのだろうか。
俺は次の寮へ既に移動していた。
にしても、魔法というのは本当に便利だ。
鏡の中を潜るだけでこうも環境の違う所まで移動できる。
…便利すぎて、元の生活に戻れなくならないよう気をつける必要があるかもしれない。
そんな事を畏怖しつつ、寮の位置を確認しようと足を踏み入れた瞬間、
__背後に、まるで付け狙われているような不吉な気配を感じた。
「誰だ」
「…へえ、分かるもんなんだな」
黒褐色の髪と共に獅の耳と尾を揺らす体躯の良い青年が不敵に笑って木陰から姿を現した。
獅子の異名である百獣の王の如く堂々とした立ち振る舞いが印章的だ。
…人間……?
…では、ない。
が、その耳と尾以外は人間と酷似している。
こちらを探り試すように目を光らせているが、敵意は感じない。
「…寮長を探している。」
「俺が寮長だ。何か用か?護衛とやら」
ああ、と納得する。
いかにも頭と言った印象を受けたので、何となくそうだろうと踏んでいた。
「…藤の花の守りを配っている。」
「この箱の中に全員分入っている。あまりは寮の敷地内にばら蒔いておくといい。」
「……ラギー」
青年は俺が差し出す箱を一瞥した後、呟くように誰かの名を呼ぶ。
そのラギーと呼ばれた鬣犬耳の青年はどこからともなく現れ、箱を受け取るとシシシッと牙を見せて笑った。
彼も人間のように見える…が、人間ではなさそうだ。
「いや〜わざわざ有難いっスねぇ、レオナさん」
「配っておけ」
「はいはーい」
軽く交わされる会話を聞き流しながら次の寮へ向かおうと足に力を込める。
「それでは、失礼。」
そして再び風を切って走った。
_____
「うわっ!」
「は!?ええっ!?やば!」
「チーターの獣人でもあんなに早く走れるやつ見た事ないんスけど!!」
「護衛くん、思った以上にやばそうっスね」
「…へぇ。」
「……す……げぇ…………」
「あ、ジャックくん、いたんスねぇ。はいこれ、護衛くんから!」
「……………………ども。」
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白帽子(プロフ) - シャリファさん» 本当ですか…!嬉しいです。では更新していく方向で考えていきます。また、長らく更新お待たせしてしまい申し訳ないです… (3月12日 6時) (レス) id: f1b6561477 (このIDを非表示/違反報告)
シャリファ(プロフ) - めちゃ需要あります!この小説面白くていつも楽しみにしてます (3月12日 3時) (レス) @page12 id: d94d66ff3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白帽子 | 作成日時:2021年5月26日 13時