第59話「長女と迷子」 ページ9
人混みに流され気付けば遊園地エリアに来てしまったA。
兄達の気配も無く、携帯も充電が切れてしまって付かない。
とりあえず、向こうも自分を探しているだろうと、動かずエリアのベンチに座って待機した。
｢お姉ちゃん一人？｣
突然見知らぬ男性から声を掛けられ固まってしまう。
美形な兄達の血を引いているんだ、勿論Aにもその気が少なくともある訳で。
『えっと…お兄ちゃん達ジェットコースター行っちゃって、待ってるんです』
センラ譲りの胡散臭い笑顔を向けて、志麻譲りの近寄るなオーラを出す。
幸いしつこいナンパでは無かったようで、すぐに諦め何処かに行ってくれた。
また暫く待っていたがやはり現れず、自分を置いて先に帰ってしまったのではないかと、嫌な事を考えてしまう。
『…本当に放って行かれてたらどうしよう』
少し泣きそうになってしまった途端、遠くから自分を呼ぶ声がした。
ハッとなり、顔を上げると、向こうから走ってくる志麻。
｢やっっと見付けたA…何でこんな所おんねん…｣
『島兄ぃ…』
｢泣くなや〜｣
流れてしまった涙を拭ってくれて、皆の所へ戻ると、坂田が抱き着いてきて、うらたは安堵の溜め息を吐いて、センラはAの頭を撫でた。
｢やっぱり泣いてたの？｣
｢だから言いましたやん、坂田と一緒やて｣
｢俺迷子でも泣かないけど！？｣
『ちゃうねん、さっき知らん人に声掛けられて』
｢誰や言うてみコロス｣
｢志麻君怖すぎ｣
｢ねぇー！お腹空いたー！｣
｢あっちのレストラン行こっか｣
もう迷子にならないように、今度は手を繋いで歩いた。
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作者名：憐
| 作成日時：2016年3月25日 13時
