第66話「次男と三者面談」 ページ16
『ねぇ、島兄』
「ん？」
『何でそんなキメてんの？』
「三者面談なんやから半端な格好はあかんやろ」
『スーツと髪型セットは逆に浮くから』
「でも女の子めっちゃ見てくれんで？」
『おかしいからだよ』
「嘘やろ」
面談当日、志麻はスーツに髪型オールバックというガチガチの格好で現れた。
すれ違う女性陣には目で追われたりひそひそと話される始末。
似合っていないと言うのは嘘だし、坂田のようにジャージで来られても困るのだが、キメすぎて逆に浮いている。
「それにさぁ、Aの先生ショートカットやん？若いやん？印象大事やん？」
『…船兄みたいだわ』
「センラ君も多分スーツやったやろなぁ」
『はぁ…』
廊下で待機していたら担任に呼ばれ志麻は愛想良く振り向く。
心做しか担任の顔が赤くなったのは見間違いだと思いたい。
「えー…Aちゃんの成績なのですが、大変優秀です、これなら進学も苦ではないかと」
「流石ウチの末っ子…」
『ちょっ…恥ずかしいから黙って』
「それで、Aちゃん。進路は決まった？」
『いや…実はまだで…』
「やりたい事は？」
そんなものまだまだ色んな経験が浅い今の段階で決められるわけがない。
就職を選んでしまえば本当にやりたい事が見つかった時に行動出来ないし、かと言って適当に選んでしまう事も、後にその新しい知識も無駄にはしたくない。
結局答えは出せず家に帰る車の中、まだ悩むAの頭に手が乗った。
「まだ時間あるんやし俺はゆっくりでええと思うで」
『島兄…』
「仕事してでもやりたい事やれるし、大学行って友達作ってもええんちゃう？」
『浦兄は早く決めておけって』
「それはただの理想や。あんま遅なっても後悔する」
『…今日島兄に頼んで良かった』
「せやろ〜、帰りどっか寄ろか。明日センラ君帰ってくるし」
『ほんと！？』
「あ、言うたらあかんやつやったかな……」
『あかんくない！やったー！』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 372人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：憐
| 作成日時：2016年3月25日 13時
