花の散る夜。【usss】 (ページ9)

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陸。ページ9

するとわらわらと舗の周りにひとが集まってきて、あっという間に柵の外側にもうひとつ、人だかりという柵が出来上がった。

最初の頃は人目に付くのが嫌だったけど、もう今となっては慣れてしまって今日は確か予定は入っていなかったから、新しく誰か引き込んでおこうかななんて考える始末。

センラはセンラで御得意の営業笑顔を貼り付けたまま、わざと艶めかしく着物の裾を整えたり、煙管を弄んだりしていた。

そんなひとの惹き付け方を知っている彼女とは違い、俺はあまり周囲のことを気にしてはいなかった。

基本呼ばれりゃ相手をするくらいで特に自分から積極的に働き掛けることは無いし、もしそうしていれば多少は借金の返済も早く済むのかもしれないけど、もう “外” を諦めている俺としてはどうでもいい話だ。

煙管だって、そう滅多にひとに渡さないし。最後に渡したのは何時だったっけ…、一昨年？そんなもんだ。

何回かうちに来てるやつ居ねぇかな、なんて思いながら人だかりの中を見ていた、そのときだった。

『じゃあ、また明日な！』

その記憶が蘇ったのは、単なる偶然なのか、それとも定められていた必然なのか。

今まで、一度たりとも忘れたことなどなかった。忘れたくても離れてくれなくて、何時までも俺を縛り付ける、あいつの声と言葉。

＿＿どうして、こんなところに。
きっと人違いだ、あいつじゃない。違うんだ、それに、もしあいつだったとしても、俺は、もう違うんだ。

もう、あの頃の俺じゃない。
俺は＿＿いえ、わっちは、花魁のうらたでありんす。

わっちはもう、

＿＿貴方様の思うようなわっちではございあせん。