検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:7,330 hit

序章。 ページ2

もう十五年の年月が流れた。


私は何時の間にかあれよあれよと空いてしまっていた二つの席の片方に座らせられ、もう片方にはあの子が着いた。

同じ場所に居たとしても、この舗を支える立場になったとしても、私たちじゃ、あの方々には到底敵いやしない。髪を結わえて簪を刺すと、__ あのふたりと同じ格好をすると、何時も思い出す。


琥珀の瞳を細めて、そのしなやかな長い指で私の髪を鋤く彼女。

翡翠の瞳で何時も優しく私たちをみつめ、守ってくれた彼女。


あの御二人に勝る花魁などもう、この吉原には居ないのだ。

私たちは、あのふたりに ありがとう も さようなら も言えていない。ずっと、会いたくて堪らない。


またぎゅーって抱き締めてほしくて、

またすりすりって頭を撫でてほしくて、


そう思ったところで何も変わらないんだけど、でも、どうしてか彼女たちは私の記憶から消えるどころか、今でも鮮明に残っている。



__ ようこそ、おいでくんなまし。



記憶のふたりは、何時もそうやってにっこり笑って、客を迎えていた。

人物。→←注意書。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.2/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ほだか。 | 作成日時:2021年2月3日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。