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序章。 ページ2
もう十五年の年月が流れた。
私は何時の間にかあれよあれよと空いてしまっていた二つの席の片方に座らせられ、もう片方にはあの子が着いた。
同じ場所に居たとしても、この舗を支える立場になったとしても、私たちじゃ、あの方々には到底敵いやしない。髪を結わえて簪を刺すと、__ あのふたりと同じ格好をすると、何時も思い出す。
琥珀の瞳を細めて、そのしなやかな長い指で私の髪を鋤く彼女。
翡翠の瞳で何時も優しく私たちをみつめ、守ってくれた彼女。
あの御二人に勝る花魁などもう、この吉原には居ないのだ。
私たちは、あのふたりに ありがとう も さようなら も言えていない。ずっと、会いたくて堪らない。
またぎゅーって抱き締めてほしくて、
またすりすりって頭を撫でてほしくて、
そう思ったところで何も変わらないんだけど、でも、どうしてか彼女たちは私の記憶から消えるどころか、今でも鮮明に残っている。
__ ようこそ、おいでくんなまし。
記憶のふたりは、何時もそうやってにっこり笑って、客を迎えていた。
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作者名:ほだか。 | 作成日時:2021年2月3日 13時