本気 - よふへゐ先生 ページ18
俺は、とある大女優と、ちょっとした仲だった。
お酒を飲んだり、買い物に行ったり、時には狂ったように一線を超えたり。
俺はその彼女に惚れていた。
あの頃、いつだって俺の脳裏は彼女だった。
これをしたら、どんな表情をするのかなあ。
驚き?困り?悲しみ?
どんな表情?
でも俺は、決まって想像するのは、一つだけ。
…歪んだ顔。
想像するだけで、期待が膨らむ。
俺は、未だ彼女の歪んだ表情が大好きだ。
女優をしている君は誰からも綺麗と言われて、立ち振る舞いだって美しくて。
…でも、俺には見せる汚れたところが一番好き。
薄汚れた過去を、眉を顰めながら、苦しそうな顔をしながら語る君の姿が、たまらなく興奮した。
俺は君が嫌いなわけじゃない。
君の歪んだ顔が一番、なによりも好きなだけで、喜ぶ顔だって大好きだ。
だから俺は、なるべく願いを叶えてあげたいってずっと思ってる。
一線を超えたがったから超えた。暇なら飲みたいって言ってきたから予定ドタキャンして一緒に飲んだ。
いつも俺は君の願いを一番に生きてるし、それを引っ張り出して要件を聞いて貰おうなんて自己中な考えは持ってない。
突然呼び出したりする彼女の方がよっぽど自己中かもしれない。
畑のメンバーに入ってから、彼女は俺を誘わなくなった。
連絡を取り合うことも、減りつつあった。
畑のみんなでテレビを見ていたら、彼女が主役の友人役で出ていた。
理不尽で可哀想な役。
みんなが口々に彼女を褒めた。主役より綺麗とか、演技が上手とか、色々。
いつぶりか、彼女にメッセージを送った。
俺は、彼女以上に素晴らしい人はいないと思っている。
彼女の苦しんだ歪んだ顔を見たい、それだけで。
「この女優、そんな演技上手いんすか?」
俺が見たいのは演技じゃない。
本気で苦しんだ歪んだ彼女だ。
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ようへいくんの歪みが酷いですね、すみません。
こういうアブノーマル漂いまくりなお話が大好きです。
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作者名:夏瞬 | 作成日時:2019年8月20日 16時