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# 2 (志麻.センラside) ページ6

「飲み過ぎですよ、これから夜見世なのに」なんてセンラの忠告が耳を通り過ぎる。
が、どうせこの一杯で締めるからと差程気にしなかった。

流石にこれ以上は陰間として駄目やからな。

大人しく御猪口を座卓へと置いては「わかっとるよ…そろそろ時間やな」と、徐々に姿を見せ始めた月を尻目に言葉を返す。


重たい腰を上げる前に、俺は唐傘をもう一度だけ抱き寄せひと撫でした。そうすると、いつも少しだけ心が安らぐ。


…さあ、夜店が始まる。







夜見世が始まる時刻になり、一人飲んだくれていた志麻くんと並んで歩く俺。

既に御客は座敷で待っていると、態々楼主が直接告げに来たのがつい先程。


「なあ茈薇くん、楼主なんや今回の御客にやたらと媚び売っとりませんか?」

「そんだけ頭が上がらん相手なんやろな。裏やけど、少しくらい気前よくした方が良さそうや」

いつもならこの辺りで禿に時間を測る為の線香を焚き付けてくれと、声を掛けに行くのだが…どうやらその必要もないようで。


たかが裏というのに、俺等に抱かれる訳でも無いのに一夜を丸々買ったなんて、…湯水の如く金を使うってまさにこの事やな。


煌びやかだが何処か雅を感じる装い、そんな長ったらしい廊下をゆったりと進み歩いていると向こう側から見慣れた朱と翠の着物に身を包んだ二人が視界に映る。

「せ…じゃなかった。月百に茈薇くん、丁度よかったわ!一緒に入らなあかんやろなーって思って、今二人のこと探してたん!」

薄く整った唇とパッチリとした目元に紅を差し、髪もしっかりと結い上げられた美しい陰間の姿…にも関わらず、口角を上げ満面の笑みと張り上げた声でこちらへと駆けて来る其奴。ほんま、いつもあかん言うてるんに。


「朱桜、いつも言うてるやろ。走ったらあかんし本名言いかけとるし、笑顔は薄らと微笑むくらいやって…」

「そういうお前やって廓言葉抜けとるやん!!自分の事棚に上げて…」



俺の言葉に被せるよう、早口に文句をつらつら並べる朱桜こと坂田。

俺と坂田が対話をすると必ずと言って差し支えない程、こうしたくだらない口論になってしまうのだった。



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現実の遊郭の事実に基づいてなるべく書いていますが、若干知識が不足している部分もあります。御容赦下さい。

本作は陰間=女郎と同じルールや階級名(性別が男なだけ)、ということで書き進めていきます。
(By.茅蜩)

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蝶花 - 更新楽しみにしてます! (2020年12月19日 22時) (レス) id: 38881abff7 (このIDを非表示/違反報告)
まるさんフィーバー(プロフ) - 続きが楽しみです!!応援してます!頑張って下さい!! (2020年3月15日 23時) (レス) id: 2dfee1726e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茅蜩 | 作成日時:2020年3月15日 18時

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