【浦島坂田船】花魁華誘唄.壱~青年期編~ (ページ2)

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# 1 (坂田side) ページ2

「…過去を振り返っても、何も変わらねえよ。俺達にはどうしようもなかったことだ。彼奴が何処かで笑っている事を、願うことしか出来ねえよ」

す…と腰を床へと下ろしたうらさんは上等な布地で誂られた俺の着物の背をひと撫ですると、それ以上は何も言わずただ自らの胸元へを引き寄せ抱き締めてくれた。

着物に染み付いた炊かれた香の臭いと、優しい陽だまりのようなうらさんの匂いが混ざって虚しいのか、落ち着くのか分からない。

男娼になんてなりたくなかった。

金を貰い、対価として偽りの愛情を演じ与えるなんて吐き気がする。それでも、そんなことをしなければ生きていけない。

許される事ならあの子に、あの子だけにこの身も心も捧げたかった…

「うらさ、っ…ごめん、俺はうらさんみたいに、割り切れへん…」

嗚咽混じりの何とか振り絞った俺の声は、宙に溶けて消えた。

それでも口を噤み腕に込める力を強くしてくれるうらさんは、やっぱり優しかった。

こんなの男娼として許される想いじゃない。だけど…

俺はこのほんのりと色付いた褪せることの無い、初恋という気持ちを捨てることは…多分一生できない。

だから、今日も君の陰を追う。この身がどれだけ穢れようと。

もう一度君に会う、その日までは。