君が悪いんだからね。【センラ】 (ページ1)

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1.余韻ページ1

you side_

-ドアが閉まります。ご注意ください-

すっかり聞き慣れた音声が頭上に響き、それを合図に目の前のドアがゆっくりと閉まる。
私を乗せた電車は夜の風をきって走り出した。

同時に、いっぱいいっぱいの幸福感が私を襲う。

人の少ない車内はとても静かで、ガタンゴトンと線路を走る音だけが響いている。
私は、膝上に置いた鞄に顔をうずめた。

頬が熱い。

これが、余韻というものなのだろう。

抱えきれずに溢れだしてしまう程の幸せ。
私には、勿体ないくらいの。

そして、その隅にちょこんと居座る罪悪感。
ああ、おかしくなりそうだ。

私は今日、憧れの先輩とご飯を食べに行った。

他校の、ひとつ上の先輩。
彼女持ちの、先輩。

今はその帰りで一人、電車に揺られている。

私のテストの順位があがり、そのご褒美だと言ってご飯に誘ってくれた。

断れなかった。

否、断る理由がなかった。

私の幼馴染みの友達の彼、折原(おりはら) 千里(せんり)さん。
私がセンラ先輩と呼んでいる彼は、私の、ただただ純粋に尊敬する先輩だ。

そんな先輩に、彼女がいることは知っていた。

だって先輩のLINEのトプ画、彼女さんとのプリクラだし。
実際、今日先輩の口から｢彼女、可愛いねん。｣という言葉も聞いた。

今日のことは、先輩が誘ってくれたから、彼女さんの了承を得てると思っていたのも事実。
まあ実際、そこのところは分からないから、今日のことは私の中に秘めておくつもり。

…ちょっと、狡いかな。私。

なんて、まあ結局。

ごちゃごちゃと言い訳をしても、私の中では今日のこと、先輩に彼女がいるいないは関係なかったりする。

憧れの先輩とご飯。

そんなの、そんなの行きたいに決まってる。

じゃあ何故、少しとはいえ、罪悪感が残ってしまったのか。
それはきっと、私が悪い。

先輩の行動に、ときめいてしまった自分がいるのだ。

車道側を歩く私の肩に手を回し、歩道側にまわしてくれたこと。
人の多い場所で、はぐれそうになる私の手首を掴んで引っ張ってくれたこと。
エスカレーターで私の前に立つ先輩。なぜか私の頭に手を置いたこと。

…最後のは、なんだか確信犯のような気がするけど、それでも、先輩の紳士的な行動にドキドキしてしまったのだ。

これは多分、先輩にとっては "当たり前のこと" 。
つまり、意識した私が悪い。