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「結構部屋広いんやな」
寒い外から暖かい菊の間に入り、着ていたコートを自分の横に置きながら言った坂田さん。
「ええ、本来菊の間は4〜5人程度で入る部屋ですからね
さて、何頼みます?」
「常田さんなんかおすすめあるん?」
「んー
あ、玉子焼きとかおすすめですよ
あとはカプレーゼとか王道の焼き鳥とかいいですよ」
「んじゃそれとカシスオレンジにしよかな俺は」
「女子ですか。私は一杯目はビールにしようかな。」
「おっさんやね常田さん」
ひどいことを言う坂田さんなんて無視してやる。
ここ、あっちゃんでは各部屋ごとにタブレットが1台ずつ設置されており、それで注文をする形だ。
ここで一人で飲むとなるとなかなか寂しいが、まあ周りの目を気にしなくていいから気楽といえば気楽だ。
「あ、そう言えば俺常田さんの下の名前知らんやん」
「あー、そう言えば教えてませんでしたね
まあそれを言ったら私も坂田さんの下の名前知りませんけど。」
坂田さんがうちのコンビニに通いだしたのってたしか半年くらい前からだったはず。
私はちょうどその時、作家としての仕事がたて続けにやってきてアルバイトする時間あるなら小説書け!台本書け!と担当の方に半軟禁されていたときだけどね。
え?私がいつからコンビニで働いてるかって?
確か3年前からだね。
高校卒業直前とある雑誌にちょっとした小説を書いて送ってみたら、それが見事新人賞受賞作品となり、そこからあれよあれよという間に作家になっていた。
20歳くらいまでは実家にいたんだけど私の担当の人が東京の本社に移動することになったからついでに私も東京に出てきたのだ。
1年間は別にバイトしなくてもいいくらいの稼ぎがあったし働きたくなかったから働いてなかったけど、それだけでは貯金も何も出来ないことに気づき21になった時にコンビニでアルバイトを始めたのだ。
「常田さん?」
「え、ああ、すいませんぼーっとしてました。
えーっと、あ、名前の話でしたね。
私の名前は常田Aです」
危ない危ない。
違う世界に飛び込んでた。
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作者名:moe | 作成日時:2017年12月26日 3時