僻む気すら失せた−�� ページ37
入院前よりずっとずっと筋力が落ちたのを実感しながら河川敷の道を走る。勿論、帽子とマスク――はつけられないが、髪は茶髪にしたのでそうそうバレない…とは思う。
「ぜぇ…っ、ぜぇ…けほっ、」
準備体操、筋トレ、ランニング、マラソン。倒れない範囲でこなし、河川敷の草原に寝転がる。ほぼ毎日こなしてた日課だが、やはり身体に効く。お陰で今や身体能力はそれなりに高い自負がある。人間卒業してる人達に比べたら霞むが。
「…ぁ゛ー」
これだけ鍛えようとまだまだ足りない。もし犯人に走って逃げられたら。もし犯人に抵抗されて殺されたら。もし崖から落ちそうな人を引っ張り上げる際、力が足りなかったら。もし交通事故で轢かれそうになった人をあと一歩の所で救えなかったら。もし、もし、もし。
「…考えたら、キリが無いな」
もしも、なんてものは考え出したら止まらない。可能性というのは無限大なのだ。良い意味でも、悪い意味でも。備えても備えても、無限の前では足りない。あの時、準備不足で遭難に陥った時のように。
陽の光を浴びて静かに目を閉じる。が、光で眩しい筈の瞼の裏が、暗くなった。
「何がキリが無いんだい？」
「…安室、さん」
目を開けたら金髪褐色イケメンが目の前にいた件について。僕が面食いの女だったら大層喜んだだろうが、生憎僕は同性愛者でも心が女という訳でもない。むしろ人間卒業の代表例である人物と出会い、辟易してた。
「出来れば、今は会いたく、なかったですね…」
「随分と正直なようで。君もトレーニングに？息が切れているよ」
「そんな所、です。息、切れてなかったら、安室さんで、遊んでたんですけど…」
「そうだろうと思ったから、体力切れてる時に声をかけたんだよ」
畜生、確信犯だった！安室さんは余裕な笑みで僕を見下ろし、天然水のペットボトルを差し出した。
「飲むといいよ。脱水症状を起こしたら大変だからね」
「…これだから、安室、さんは」
「貶されてるようには思えないね」
「ハル語で"ありがとうございます"です」
「そうか、覚えておくよ」
安室さんの気遣いにより貰った水を一気に飲む。か、身体全体に水分が染み渡る…体力もだんだん戻ってきた。
「君はよくここでトレーニングを？」
「いえ、よく場所を変えて走ったりするんです。安室さんも…その格好は、同じようですね」
ゼロティーで見た事ある彼の運動着に、彼も僕と同じ目的と悟る。オフの彼と遭遇するとは思わなんだ…
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想世(プロフ) - ﾁｯｽﾁｯｽさん» コメントありがとうございます。本編と異なる可能性もありますが、次回は大体あんな感じでお送りします。 (2022年8月6日 6時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ﾁｯｽﾁｯｽ - 次回予告✨ (2022年8月5日 17時) (レス) id: 87f77450ee (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - わさびもち！さん» コメントありがとうございます。気に入っていただいて何よりです。 (2022年8月4日 16時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
わさびもち！(プロフ) - 好きです…好きです…最高に好きです…すき… (2022年8月4日 2時) (レス) @page50 id: bc0339f7a6 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - ???さん» コメントありがとうございます。応援していただきとても嬉しいです。 (2022年7月25日 19時) (レス) @page40 id: 242a51c45c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年7月6日 15時
