追憶の夢想−�� ページ42
「どうしよう…」
予備の電池があれば、と歯噛みしたのは未だに鮮明に覚えている。ここまで来れたのは懐中電灯で道を照らせたからであり、光らない以上帰る事は困難だ。
「み、道覚えてない？」
「…ごめん」
彼女の笑顔が歪む。でも山を下れば大丈夫だと、彼女は僕を励ました。
「ごめん…」
「またそれ…いいよ、私だってライト持ってけば良かった話だし」
「…でも今から山を降りようとするのは危ないよ。せめて朝になるまで…」
「そんな事したらお母さん達にバレちゃう！…大丈夫だよハル、私こう見えて勘は良いんだから」
「野生の勘が？」
「誰が野生児よ！」
「そこまでは言ってない」
なんだかおかしくて、互いに噴き出した。結局この状況も、二人でいれば乗り越えられるって、信じてた。
「――――！」
「やめろぉッ！！」
テレビのチャンネルが変えられるように、場面が切り替わる。写真のような途切れ途切れのワンシーンが流れる。
彼女と僕は取っ組み合いになっていた。あの夜、あの崖で。
経緯は分からない。何故か僕と彼女は喧嘩して言い争って、それで、
崖から彼女を突き落とした。
僕も崖から落ちた。
「か…ｯ、ぐ、ぁ…いｯ…がァ゛…っ！」
途方も無い闇に落ち、強固で無骨な岩肌に激突し、急な坂で転がり落ち、鋭利な木の枝は刺さった。その時にどうやら強く頭を打ったらしい。だからこの辺の記憶は曖昧だ。だが意識を失う直前、身体中に傷ができ、出血量もおびただしいものだったのは覚えている。
目が覚めたら、僕はボロボロの状態で病院の一室で寝ていた。泣き疲れた後のような母さんがそばで眠っていた。どこもかしこも包帯だらけで、中身は傷痕だらけだった。
「あ…愛は！？一緒にいた筈なんだ！」
彼女は僕より先に落ちた。僕が生きてるなら彼女も生きている、そう思って色んな大人に聞いた。
でも全員首を横に振った。
「愛ちゃんの行方は…誰も知らないの」
――だが僕が発見された場所の近くで愛の血が、普通ならば死んでる量で見つかった。
彼女の身体だけが忽然と消えた。
「う、そだ。そんな…」
「ねぇ遥斗、あの時何があったの？まさか何かに襲われたの！？」
「…あんまり、覚えてない。途切れ途切れにしか…」
「頭を強く打ったので、恐らく脳が傷付いて…」
それからは誰の言葉も耳に入らなかった。
他の大人達の間では、謎の不審者が僕達を突き落とした事になってる。
ぼくがころしたのに。
僕が彼女を、突き落としたんだ。
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想世(プロフ) - トめAと@カド松さん» コメントありがとうございます。過去だけでもSAN値ゴリゴリ削られてますね… (2022年8月11日 9時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@カド松(プロフ) - SAN値ヤバそう･･･ (2022年8月11日 7時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 深夜さん» コメントありがとうございます。帰省の際に何かしらの悶着はありそうですね。 (2022年5月29日 19時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - コレお母さんとひと悶着あるパターンかな?(フラグ) (2022年5月29日 19時) (レス) id: 19b009e4f4 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 時凪さん» コメントありがとうございます。執筆の励みになります。これからも更新を頑張らせてまいります。 (2022年5月29日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年5月29日 16時
