追憶の夢想−�� ページ41
「じゃーん」
「…何それ。万華鏡？」
「万華鏡にしては大きすぎるでしょ…望遠鏡だよ。知らないの？」
夏休み。暑いにも関わらず僕の部屋に邪魔してきた愛は、自慢げに僕にそれを自慢してきた。
「知ってるけど…何、またお前の父さんから貰ったの？」
「うん。いーでしょ」
うちわで仰ぎながらスイカを食べて涼しむ。風鈴の音が辺りに儚く響く。
「そういえばハル、また朝に山の方行ってたでしょ。おばさんから聞いたよ？」
「…あそこで寝転がるの、一番落ち着くんだよ」
「ねぇ、そこってさ、星も綺麗に見えるかな？」
「やめとけって。道は整備されてないし夜は暗いし、割と登るよ」
「でも道知ってるんでしょ？懐中電灯持っていけば平気だよ」
「あのなぁ…まず絶対反対される。僕は信じてないけど、神隠しとか起きるんだってさ。お前の両親はそういうの…」
「大丈夫、お母さん達には"ハルの家に泊まる"って言えば平気だよ」
「えぇ…」
いいでしょ、行こうよ、と言う愛の押しに負けて渋々了承した。
――ダメだ、行っちゃ。懐中電灯一本と上着と望遠鏡？たかがそんな持ち物で行くなんて無防備だ、やめてくれ。
ここが夢だと分かっていた。追憶の疑似体験。僕の記憶を辿る夢の旅。けれど僕は自由に高校生の"僕"を操れない。指を咥える事すら出来ずに、僕は傍観しか出来ない。
「じゃあ今日の夜出発ね。すぐにお母さん達に伝えてくる！」
「せめてスイカ食べ終わってから行け！」
「あ、そうだった」
さっさとスイカを食べ、口に果汁や種を付けたまま、彼女は僕の家から出た。
「ったく、慌ただしいヤツだよホント…」
僕だって今、心臓がうるさかったクセにな。
夜が近付けば、ようやく準備を始める。今の僕にとっては遅過ぎる。その上持ち物は少ない。たかがその程度の荷物で山を登ろうとしたあの時の僕は、とても浅はかだ。
「ひ、ひー…流石に疲れた…」
「だから言ったろ…」
「でもここ良いね。寝っ転がれるし、これなら望遠鏡も立てられる」
「見たらさっさと帰ろう。あんまり遅いと、母さんに訝しまれる」
「そうだね」
しばらく天体観測を楽しんだ。愛は星に詳しく、指をさしては子どもみたいに僕にどんなものかと教えた。この時間がずっと続けば良いのに、なんて幻想すら考えた。
楽しげに笑う彼女が好きだった。だからそれに釣られて僕にも笑顔が増えて、彼女にも笑顔が増えた。
…それなのに。
「そろそろ帰ろ…ん？」
「どうしたの？」
「懐中電灯が…点かない」
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想世(プロフ) - トめAと@カド松さん» コメントありがとうございます。過去だけでもSAN値ゴリゴリ削られてますね… (2022年8月11日 9時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@カド松(プロフ) - SAN値ヤバそう･･･ (2022年8月11日 7時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 深夜さん» コメントありがとうございます。帰省の際に何かしらの悶着はありそうですね。 (2022年5月29日 19時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - コレお母さんとひと悶着あるパターンかな?(フラグ) (2022年5月29日 19時) (レス) id: 19b009e4f4 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 時凪さん» コメントありがとうございます。執筆の励みになります。これからも更新を頑張らせてまいります。 (2022年5月29日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年5月29日 16時
