見えない影を探して−�� ページ35
昨日、遥斗さんと辿った道をもう一度辿る。道を走り、獣道を抜け、あの崖まで。
(結構距離あるな…)
追跡中は夢中になって気付かなかったが、崖まで遠い。ようやく着いた頃には、息も絶え絶えになった。
昨日は暗かった為に見えなかったが、この崖から見下ろす光景は綺麗だ。木々の緑と空の青が調和し、美しい自然の景色が生み出されている。
やはり彼はいた。崖の先の方に座り、足は崖下へと伸ばしていた。
「危ないよ、遥斗兄ちゃん」
驚かせて落とさないよう、慎重に声をかける。だが彼は予想していたかのように、ゆっくり振り向いた。
「おはよ、コナンくん」
何でもないように、彼は笑顔で挨拶してきた。でも彼の顔は青白い。
「…昨日から、遥斗兄ちゃんの様子はおかしいよね。この崖に来た時から。この崖で何かあったの？」
踏み込むべきか逡巡した。だが今の彼は放っておけない。オレの質問に、彼は困ったように視線を逸らす。
「…コナンくん。ここに来る途中に本当は、神様の祠があったんだ」
「昨日光彦に言ってたやつ？」
「そう。でも不思議だよね、僕以外の誰も知らないんだ」
「それは…」
「それに、僕の知ってる人達がいたんだ。中にはとても大切な人も。でも誰もそんな人がいたなんて知らない。代わりに、僕の知らない人がいっぱいいる」
「…」
「僕が知ってる店も少ない。代わりに知らない店がいっぱい。…ねぇ、コナンくん」
遥斗さんは立ち上がり、緩やかな歩幅でオレに近付く。その時のカオを、しっかりと覚えてしまった。
「僕はおかしいのかな」
その顔は死相、という言葉が当てはまった。
「…それは…」
言葉を濁す他無い。だって、聞いてる限りだとその通り。恐らく記憶障害だ。
「…初めて帰省した時、錯乱してちょっと暴れちゃって。父さんの知り合いに軽く診てもらったら、"総合失調症の疑いアリ"だってさ」
「え…じゃあ、その記憶は？」
「妄想の一種だって。…ま、総合失調症ってのはともかく、僕はおかしくなってたかもね」
「…どうしてそう思うの？」
精神病は自覚や自認が難しい。そもそも遥斗さんがそうにはあまり思えなかった。他人が気付けなかったんだから、なおさら自覚は難しい筈。
「…この崖に来るか、もしくは死にかけるか。そうすると、声が聞こえるんだ」
「声？」
「そう。この世に元から存在しない…僕の中では死んでる、初恋相手の女の子の声。今も聞こえる」
「え？でもそんなのボクには…」
「そう。だから僕の――幻聴だよ」
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想世(プロフ) - トめAと@カド松さん» コメントありがとうございます。過去だけでもSAN値ゴリゴリ削られてますね… (2022年8月11日 9時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@カド松(プロフ) - SAN値ヤバそう･･･ (2022年8月11日 7時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 深夜さん» コメントありがとうございます。帰省の際に何かしらの悶着はありそうですね。 (2022年5月29日 19時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - コレお母さんとひと悶着あるパターンかな?(フラグ) (2022年5月29日 19時) (レス) id: 19b009e4f4 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 時凪さん» コメントありがとうございます。執筆の励みになります。これからも更新を頑張らせてまいります。 (2022年5月29日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年5月29日 16時
