逃亡する真相−�� ページ21
『タリージェって知ってるかい？』
『知らね。薬？』
『そう。神経障害者に与える薬なんだけどね、要は痛み止めさ』
『神経障害者用の痛み止め？』
『うん。とは言っても君の思うような痛みだけでなく、…そうだな。例えば、しばらく正座をしたら、立ち上がった時に痺れるだろう？あれがずっと続く、そんな症状を一時的にだけど止めるのさ』
『へぇ…詳しいね』
『ははっ、そりゃあね。…さて、薬と毒の本質は同じだよ。毒は薬にもなると言うしね』
『…なら、そのタリージェってのも毒になるんだ』
『ああ。神経に効く痛み止めだからね、特に投与過多は危険さ。副作用としてめまいやふらつきが酷くなるんだ。もし与え過ぎたら――…』
(――無力症、関節炎、嚥下障害等々…だったかな、父さん？)
化学実験室を通って入る、薬の並ぶ場所。そこは普段は酷く静かな場所だが、その日は侵入者が一人忍び込んだ。薬の名が書かれたラベルを見て、ごくりと唾を飲む男が一人。
黒に染めたはねっ気の酷い髪型で、左耳に金色のシンプルなピアスをした、ハイネックの上にパーカーを羽織った男だった。灰色の鋭い双眸が薬を睨む。
男は薬を掠め取り、さっさとその場を後にした。
(スタンガンに縄、薬に盗聴器の受信機…まるで悪い事をするみたいだ。強ち間違ってはないけど…)
スタンガンを手にした男は、目の前でスタンガンの衝撃により倒れ伏す眼鏡の男を見下ろす。そばには何かのスイッチが落ちており、スタンガンを手にした男がそれを拾う。
「こんにちは」
「な…ｯ、んだ…お、前…っ！」
「…君のせいで惜しい人間を亡くす事を無くしに来たんだ」
スタンガンの男――倉間遥斗は悠然と、だが冷酷に告げる。その瞳には何の情も無い。爆弾魔の男は、まるで倉間との間にテレビの液晶のような壁の隔たりがあるように感じた。
「な…に、言って…」
「お仲間ならもう永遠に会えないだろうね。君にもしばらくの間、病院から動けないで欲しいんだ。…頼むから」
淡白に倉間は用意した薬と水を用意する。爆弾魔の男に飲ませようと、彼は屈んだ。
「君がいない方が未来はきっと良いよ。僕は未来を知ってる。だって僕のいた世界では、ここは漫画なんだからさ」
「…！？」
倉間の言葉に、爆弾魔は目を見開く。
そして。
爆弾魔は急に頭を抱え、呼吸を荒くし、そして死んだように眠った。
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想世(プロフ) - トめAと@カド松さん» コメントありがとうございます。過去だけでもSAN値ゴリゴリ削られてますね… (2022年8月11日 9時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@カド松(プロフ) - SAN値ヤバそう･･･ (2022年8月11日 7時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 深夜さん» コメントありがとうございます。帰省の際に何かしらの悶着はありそうですね。 (2022年5月29日 19時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - コレお母さんとひと悶着あるパターンかな?(フラグ) (2022年5月29日 19時) (レス) id: 19b009e4f4 (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 時凪さん» コメントありがとうございます。執筆の励みになります。これからも更新を頑張らせてまいります。 (2022年5月29日 18時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作成日時：2022年5月29日 16時
