宮野志保の艱難 ページ39
その男の第一印象は良くなかった。
別に組織の人間なんて、お姉ちゃんを除けば大抵悪いけれど、その男は格段に違った。
「アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だ。シェリー、たまに君の監視を請け負うことになった」
「そう…」
「…?どうした、そんなにジッと見つめて」
「…何でもないわ」
CMでよく聞く独特な発音を完璧にコピーしたその男の名乗りに、最初は冗談だと思って聞き流していた。
「ところで、なんて呼べばいいのかしら」
「アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だ」
聞き間違いじゃなかった……
思わず頭を抱える。
なかなかクセが強い男が来てしまった、と。
アサヒは時々来て私から研究成果などの報告を聞くけれど、あの仏頂面はまるで変わらない。何を考えてるか分からなくて、気味が悪かった。
一度、彼が本当に報告内容を理解しているのか気になって、デタラメな書類を渡してみた。
「…聞いたこともない化学物質がたくさんあるな」
意外にもその男は筋肉のみならず、化学の知識も持ち合わせていた。
一瞬こちらをジッと見つめるなり、とりあえずは騙されてくれたようだけれど。
「…それは何?」
「花だ」
「見れば分かるわよ…」
会う回が積み重なるごとに、彼の奇行が目立つようになる。
「このラボは殺風景だから、花でも飾ったらどうだ」
「大男には似合わないセリフね」
「ここはシェリーしか花も無いしな」
「まさか口説いてるつもり?」
「すまない、年下をそのような目では見られないんだ」
「何で私があなたを好いてるみたいになってるのよ」
なんなのよこの男、とやりがたさを抱く一方で。
「持って帰ってくれるかしら?枯れたら処理が面倒だもの」
「枯れる頃にはまた来る。新しい花を持って」
「花がもったいないから遠慮しておくわ」
「どうせ妹へ花を買うついでだ」
「…妹がいるのね、あなた」
「ああ。死んだがな」
もう会えない大切な人がいるという点で、ほんの少しだけ親近感が湧いた。
それから多少は気を許せば、彼は愛犬のウ◯ッシュを見せてきたり、私がアサヒと呼べばアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓の発音レッスンが始まったりした。
最後はまるで意味が分からない。
ただ、ジンよりはずっとマシだった。
監視の目は緩かったし、明らかに誤魔化していると分かる言い訳も素直に聞いてくれるし、ウメッ◯ュは可愛かったし。
――だから花は手入れして、大事に花瓶に飾った。
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想世(プロフ) - 紅弁慶さん» コメントありがとうございます。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓ はしつこすぎず、薄まらないよう気を遣いながら入れているので、そのようなところに気付いていただけて嬉しい限りです! (4月6日 13時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 想世さん» あぁ…流石要所要所にアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓を匠に入れるアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんだ…。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんは本当にうまーく、何気なく出すんですよ… (4月6日 1時) (レス) id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 紅弁慶さん» アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓「たとえ死んでも、俺はアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だし、アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓であることを誇りに思う!!」 (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 残念だったな…工藤くん……死んでもそのこだわりは直せないんだな、これが… (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます。こんな ひがいを うみだすとは あさひは やっぱり すっごいわるもの まる(小並感) (4月5日 16時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:想世 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2024年3月25日 9時