㉙ ページ29
「杖か車椅子の生活になるでしょうね」
医師からそう診断された通り、いくら頑丈なアサヒでも下半身不随からは逃れられなかった。
大打撃を受けた影響で足の神経は麻痺し、ほぼ動かなくなってしまったのだ。
「俺のトリスハイ◯ールと八◯山が…」
「右足と左足にも酒の名前つけてたのか…」
酒、好きなんだな…
「…すまなかった、アサヒ。僕を庇って、こんな重い後遺症を…」
「気にしないでください。あなたに何かあれば、妹があの世から殴りかかってきますし」
「妹さんアグレッシブだな」
脳筋なところは似てそうだ。
「…まあ、降谷さんが大した怪我をしてなくて何よりです」
「意外と気にかけてくれるんだな。僕のことは嫌いだろ?」
「嫌いというか…ただの八つ当たりです。というか、その件で妹に怒られまして」
「怒られた?」
「"やめて!私のために争わないで!"とのことです」
「妹さん強かだな」
「妹も冗談好きですから…まったく、誰に似たのやら」
「十中八九アサヒだろ」
この兄あって妹ありだな。
「それによくよく考えてみれば俺、あなたたちのことは嫌いじゃないですよ」
じっと目を覗き込んでくるアサヒのその言葉は、冗談のようには聞こえなかった。
「嫌いな相手と酒なんか飲みたくないですしね。酒が不味くなるので」
「…ふ、退院したらまた飲みに行くか?」
「ぜひ。リハビリがありますから、退院は随分先になりますが」
飲み会の約束を取り付ければ、僕は自然と笑みを漏らしていた。
どことなくアサヒの仏頂面も緩んでいる気がする。
「萩原や松田にも言っておこう。あいつらもアサヒの安否を心配して、見舞いに来てたんだ」
「そうなんですか?次会った時にはお礼を言っておきます」
「そうしてやってくれ」
そろそろ時間か。
僕はアサヒに背を向けて病室を後にしようとした。
「降谷さん」
「何だ?」
病室の扉に手をかけた途端、彼は僕を呼び止める。
「例え組織が潰れたとしても――」
アサヒは芯のこもった声で、ハッキリと告げた。
「俺はアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓です」
「だからお前のそのこだわりは何なんだ」
ここまで来るといっそ清々しい。
「分かった分かった、アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だな」
「抑揚が甘いです」
「手厳しいな…」
呆れたように笑って、僕は病室を後にした。
練習でもしてみるか、なんて馬鹿げたプランを立てながら。
病室でひっそり微笑むアサヒは、残念ながら見られなかった。
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想世(プロフ) - 紅弁慶さん» コメントありがとうございます。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓ はしつこすぎず、薄まらないよう気を遣いながら入れているので、そのようなところに気付いていただけて嬉しい限りです! (4月6日 13時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 想世さん» あぁ…流石要所要所にアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓を匠に入れるアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんだ…。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんは本当にうまーく、何気なく出すんですよ… (4月6日 1時) (レス) id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 紅弁慶さん» アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓「たとえ死んでも、俺はアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だし、アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓であることを誇りに思う!!」 (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 残念だったな…工藤くん……死んでもそのこだわりは直せないんだな、これが… (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます。こんな ひがいを うみだすとは あさひは やっぱり すっごいわるもの まる(小並感) (4月5日 16時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:想世 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2024年3月25日 9時