㉗ ページ27
なぁ。
あの時信じてやれば、こうはならなかったのか。
"もし私が死んだら、これから書く人のことをお兄ちゃんに助けてほしいな"
そんな書き置きを残してお前は出かけて、その先に爆発物があって、一人で爆弾と心中した。
手紙にちゃんと目を通せば、"死ぬかもしれないけど、それでも助けたいの"なんてふざけたことが書かれていた。
――何で会ったこともない人間に、そこまで命を張るんだ。
「…もしかしてお兄さん、彼女の家族?」
あの日に妹に助けられた爆発物処理班の男と、墓でバッタリ会った。
途端に俺は、目の前の男が憎くて憎くてたまらなくなった。
「……助けられなくて、すみませんでした」
頭を下げられても、誠意を見せられても、俺の心は変わらない。
あの子は未来で知った人を愛していた。
だからこそ憎悪は沸々と湧き上がる。
――何でこいつらのために、妹が死ななくちゃいけなかったんだ。
――何で妹はこいつらのことを、死んでも助けたかったんだ。
――――何で妹が死ぬキッカケを作った人間たちを、助けなくちゃならないんだ。
妹に残された呪いは、どんな痛みや苦しみより辛かった。
それでも妹の望みを叶えようと奔走したのは、未練がましくも"妹はちゃんと見ている"と思い込んで、これ以上あの子の顔を曇らせたくなかったからだ。
だからずっと鍛え続けた。これ以上何も取りこぼさないように。
嫌いな人間相手でも、俺はしっかりと妹に言われた通りに助けた。
だが怒りが収まらない。
憎い心は消えない。妹の愛した者たちは嫌いなままだ。
…いや、厳密に言えば、嫌いではないな。
「お兄ちゃん、助けて。萩原さんって人が死んじゃうの…!でもお兄ちゃんの力があれば多分!」
「悪いが、任務で疲れて今はお前の虚言には付き合えないんだ…」
「虚言じゃないし!本当に死んじゃうんだよ、それで萩原さんが死んじゃうせいで松田さんまで死んじゃって!」
「あのなぁ…はぁ……」
「〜〜〜〜ッ!お兄ちゃんのバカ!もう私だけで助けに行ってやるんだから!!」
――あの時に妹を信じてやれなかった自分への怒りを、彼らにぶつけているだけだ。
いくら身体を鍛えたところで、心は昔とまるで変わらない。
昔の残影を追って、道化の皮を被っているだけで。
――なぁ、お前の言う通り、全員助けたぞ。
――だからもう、いいだろ?
――――俺もそろそろ、そっちに、
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想世(プロフ) - 紅弁慶さん» コメントありがとうございます。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓ はしつこすぎず、薄まらないよう気を遣いながら入れているので、そのようなところに気付いていただけて嬉しい限りです! (4月6日 13時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 想世さん» あぁ…流石要所要所にアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓を匠に入れるアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんだ…。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんは本当にうまーく、何気なく出すんですよ… (4月6日 1時) (レス) id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 紅弁慶さん» アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓「たとえ死んでも、俺はアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だし、アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓であることを誇りに思う!!」 (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 残念だったな…工藤くん……死んでもそのこだわりは直せないんだな、これが… (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます。こんな ひがいを うみだすとは あさひは やっぱり すっごいわるもの まる(小並感) (4月5日 16時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:想世 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2024年3月25日 9時