㉖ ページ26
妹の特異性に気付くようになったのは、両親が自爆テロに使われて二人暮らしを始めた時だった。
妹はいつも笑顔だった。まるで生まれた時から好きな人がいるかのごとく、幸せそうにしていたのだ。
「推したちと同じ世界で空気が吸えるなんて最高じゃん…はぁ…生きてるって素晴らしい」
いつも何を言っているのか分からないが、とにかくあの子の笑顔に絆されたのは事実だ。
「お兄ちゃん、組織で働いてるんでしょ?いいなー。というかお兄ちゃんってなんか強いし、コードネームもらいそうだよね。筋肉もりもりマッチョマンの変態だし」
「失礼だな。…それに、組織の中でもコードネームをもらえるのはほんの一握りだぞ」
「いや、だって車に轢かれても平気じゃん…我が兄ながらドン引きだよ……」
そこで自分の身体が普通ではないことを知った。
「お兄ちゃんがコードネームをもらうとしたら、何だろうなー…ストゼ◯?」
「ダサいな…」
「いいじゃんス◯ロングゼロ。カッコいいよ。あ、でもアサヒスーパード◯イの方が面白いかも…お兄ちゃん、ちょっとアサ◯スーパードライをCM風に言ってよ」
「嫌だ」
「一生のお願い!」
「一生を安売りするな」
いつも突飛なことを言う妹には手を焼かされていたが、なんだかんだで甘かった自覚はある。
「――アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓」
妹のためなら何でもしてやれると思うくらい、愛していたんだ。
「ぷっ…あははっ!お兄ちゃんうっま!!声似てるし、巻き舌完璧じゃん!」
「それ、褒めてるのか?」
「褒めてる褒めてる!ねー、ウメッ◯ュ?」
飼い始めた日に俺が飲んでいた酒の名前を妹につけられた子犬は、妹に同意を求められて元気良く鳴く。
「もしコードネームをもらうなら、絶対アサヒスーパ◯ドライにしてよ!」
「笑われるから嫌だ」
「だろうね。少なくとも私は面白いもん」
「おい」
ケラケラと笑って茶化す妹に悪い気はしなかった。
そんなことで笑顔になってくれるなら別にいいか、なんて思っていた。
「ス◯ゼロだって降谷さんのためにあるような名前なのに、バーボンになっちゃうもんねー。ま、バーボンもカッコいいけど」
「誰だそいつ」
「将来組織に入ってくるスパイだよ」
「はいはい、いつものやつだな…」
「あ、嘘だと思ってるでしょ。嘘じゃありませーん」
妹は時折、未来予知じみたことを言う。
だがこの時の俺は、全く信じていなかった。
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想世(プロフ) - 紅弁慶さん» コメントありがとうございます。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓ はしつこすぎず、薄まらないよう気を遣いながら入れているので、そのようなところに気付いていただけて嬉しい限りです! (4月6日 13時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 想世さん» あぁ…流石要所要所にアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓を匠に入れるアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんだ…。アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓さんは本当にうまーく、何気なく出すんですよ… (4月6日 1時) (レス) id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 紅弁慶さん» アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓「たとえ死んでも、俺はアサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓だし、アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓であることを誇りに思う!!」 (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
紅弁慶(プロフ) - 残念だったな…工藤くん……死んでもそのこだわりは直せないんだな、これが… (4月5日 21時) (レス) @page36 id: 3f79d1fd3d (このIDを非表示/違反報告)
想世(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます。こんな ひがいを うみだすとは あさひは やっぱり すっごいわるもの まる(小並感) (4月5日 16時) (レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:想世 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2024年3月25日 9時