悲劇のハッピーバースデー−�� ページ46
「だって、彼の誕生日だったらしいですから。殺さないでおこうと思いまして」
コニャックは陽気に答える。それは、屋敷を大規模な火事に見舞い、中にいた人間を惨くも業火の餌食にした人間の声色ではなかった。
「…誕生日だと？そんなふざけた理由で生かしたのか」
「別にラムからは何も言われてないからいいじゃないですか。それに自分が生まれた日の直後に死ぬだなんて、皮肉めいてて嫌でしょう」
要約すると、コニャックの気紛れである。それを見抜いたキュラソーは溜息を一つこぼした。
「お前の享楽主義は理解出来ん」
「アルマの享楽主義なら理解出来る、みたいな言い方ですね」
「まだ奴の方が分かりやすかった。お前は…生かしたり殺したり、その線引きがイマイチ掴めん。だが一つだけ分かる」
「それは何です？」
「悪趣味だ」
実にシンプル。
両親を殺しておいて、その子どもは生かす――それは慈悲のように見えて、キュラソーから見るとそうでもなかった。両親共に殺したならば、子どももあの世へ送ってあげた方がまだ慈悲がある。キュラソーはそう考えていた。
世の中には、死んだ方がマシだと思える所業や感情が存在するのだから。
「…そうですかね？アルマの方がよっぽど悪辣でしたし、悪趣味でしたよ。貴女もご存知でしょ？」
「ああ、知っている。アルマの事も、アルマがお前にした事も、――お前がアルマにした事も」
「…ホント、ヤな事記憶してますね」
「それがラムが私に求めた役割だ」
キュラソーは生まれつき持つ脳級の損傷のせいか、大変記憶力に優れている。その脳を買われてラムに飼われた為、彼女は知る限りの情報を有していた。
アルマニャック、そして二人のコニャックについて。
コニャックは笑みを崩さない。だがその笑顔の温度が下がる。
「……迷うなぁ」
「何がだ」
「こちらの話です。さて、僕は任務も終えたので帰りますよ。焦げ臭いので、シャワーも浴びたいですし」
「後部座席の少年はどうする」
「眠らせてますので、後でお抱えのヤブ医者の所にでも連れていきましょう」
「…眠らせているのか」
眠らせている。そう聞き、コニャックは頷いた。
「相変わらずの抜け殻趣味だな。眠らせた人間を集めてどうしたいんだ？」
「ふふ。さぁ、どうでしょう」
「…」
キュラソーはコニャックの微笑を見た。やがて追及をやめた。
聞いても、ロクでもない回答が来るのは目に見えたから。
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想世(プロフ) - ネルさん» コメントありがとうございます。そのようにおっしゃっていただき、とても嬉しい限りです。 (10月30日 21時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ネル - 最新話のイラストのコニャックの顔が本当に好きです！！闇のありそうな顔というか…！！ (10月29日 21時) (レス) @page28 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年5月26日 16時
