悲劇のハッピーバースデー−�� ページ45
「――君には悪いこと、したね」
火事場の中、男は自らも命の危機に瀕しているにも関わらず、悠々と告げる。
「目的も、もう果たしたし……ラムからは、子どもの事は特に言われてないし…いいか」
「――ッ！」
「ハッピーバースデー、少年。僕から君へ、贈り物だよ」
いらない、と口を動かしたが、少年はもう活動限界を超えている。身体の全身から力が抜け、床へ倒れる間際、男に受け止められた。
そして男はしゃがみ、少年の耳元でそっとささやいた。
「――この世界はね――……」
深夜未明。組織にとって都合の悪い情報を持つ、とある資産家の屋敷が突如爆発に見舞われ、火事にまで発展して全焼した。
なお、火災現場の屋敷に住んでいた一家は骨ごと焼けたと見られたが、屋敷の庭に一家の者でない骨を発見。警察のDNA鑑定の結果、一家に恨みを持つライバル会社の幹部である事が判明。警察はこの者が恨みを持って放火し、自らも逃げ遅れて死亡したと断定。
なおその者も、組織にとって邪魔な人物であった模様――…
そして未だに消化活動に励まれる傍ら、服の所々を黒焦げにした男が運転席へ乗り込んだ。
「げほっ、ごほっ。――で？何でここにいるんですかねぇ？貴女、帰ったんじゃ？」
「火に飲まれて死んだかと思ったが、意外と余裕そうだな」
「勘弁してくださいよ…僕、もし火事で死ぬとしたら美女と熱々になりながら死ぬって決めてるんですよね」
「私の方をチラチラ見ながら言うな」
男――コニャックは任務を終え、何故か自分の車の助手席にいたキュラソーへ目をやる。
「やだなぁ、僕に気があるならそう言ってくださいよ」
「やめろ、悪寒がする。少なくともお前と火に飛び込んで死ぬなど、絶対に避けるべき結末だ」
「そこまで全力拒否されるだなんて、僕、傷付いちゃいます。悲しい悲しい」
「思ってもみない事を言うな」
「でしたら用件を言ってくださりませんか？」
コニャックはバックミラー越しに彼女と目を合わせた。
「もしかしてラムに何か言われました？"不始末があれば手伝え"と」
「それもあるが、だとしたら何だ」
「いいえ、何も。ただ、貴女が何か言いたげだったので」
コニャックは催促する。キュラソーの抱いている疑問点を吐く事を。彼女もお望み通り、怪訝に思って後部座席へと視線を送った。
「――何故子どもを生かした？」
視線の先には、浅い呼吸を繰り返して眠る少年がぐったりと後部座席を占めていた。
悲劇のハッピーバースデー−��→←悲劇のハッピーバースデー−��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
想世(プロフ) - ネルさん» コメントありがとうございます。そのようにおっしゃっていただき、とても嬉しい限りです。 (10月30日 21時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ネル - 最新話のイラストのコニャックの顔が本当に好きです！！闇のありそうな顔というか…！！ (10月29日 21時) (レス) @page28 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年5月26日 16時
