手遅れな分岐点−�� ページ32
「――君は…」
コニャックはライが出会ってから初めて笑みを崩し、動揺で足を止めた。その間、宗一はコニャックに接近し、無理矢理引き止めるよう腕を掴む。
「今までどこ行ってやがったんだよ！？急に音信不通になりやがって…家に行っても誰もいねぇし、心配してたんだぞ！」
跳ねた黒髪の、目つきの悪い若々しい男。一見不審人物に見えなくもないが、平穏に生きる一般市民だろう。コニャックに近付く宗一をそう判断したライだが、コニャックの瞠目っぷりを見かけ、今間抜けヅラを晒す彼との並々ならぬ縁を感じ取った。
「…」
「オイ、なんとか言ったらどうだよ、遥斗…ッ！」
宗一は顔をしかめ、問い詰める。そのカオには悲壮感が漂っていた。
ライはコニャックへ無言で視線を向けたまま。宗一もコニャックの腕を掴んだまま。三方、気まずげな沈黙が流れた。
だがコニャックは、するりと宗一の腕から離れる。
「…！？お前、今、何し――」
「これ、僕の連絡先」
帽子のつばで顔を隠し、渦中の人物は一枚の紙を差し出した。
「明日以降ならかけてよ。…今は無理なんだ」
端的に告げれば、ライにアイコンタクトを送ったコニャックは宗一から背を向けて走った。仲間からの無言のメッセージを受け取ったライは、コニャックと共に駆け出す。
「あ、オイ！待てよ遥斗ッ！」
夜闇に置き去りにされた男の叫びが虚しく響く。
「待てよ、俺はまだ、お前に聞きたい事があんだよ…！」
今まで、何してやがったんだ――…
純粋な心配が伴う質問に答えられる当の本人の背は、既に宗一の手が届かぬ距離にまで遠ざかっていた。
「…良かったのか？友人らしいが」
逃げる最中、路地裏の角を曲がり、宗一の視線を切った後、ライはようやく開口する。深く被られた帽子と、明かりの少ない闇の中では、相手の顔の色をうかがい知れる道理は無かった。
「――たった今、腐れ縁に変わった、ただの過去の男ですよ」
回答の声は随分と平坦だった。
だが何かを隠そうとしていると、ライは直観的に悟った。
声に感情を出さないように必死になっているのか、彼の上がった口角は決められたものでは無く、引き攣るような笑みになっていたから――……
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想世(プロフ) - ネルさん» コメントありがとうございます。そのようにおっしゃっていただき、とても嬉しい限りです。 (10月30日 21時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ネル - 最新話のイラストのコニャックの顔が本当に好きです！！闇のありそうな顔というか…！！ (10月29日 21時) (レス) @page28 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年5月26日 16時
