手遅れな分岐点−�� ページ31
司令が伝えるは短絡的単純作業。コニャックが取引現場に向かい、組織と別組織で取引を行うが、万が一相手がコニャックを襲った場合はライが遠くから狙撃して全員撃ち殺すというもの。
コニャックにとって、あまりにも危険な仕事だった。
「複雑じゃなくて助かります」
しかしコニャックは変わらず口角を上げたまま。余程の自信からか、あるいはただの蛮勇からか、彼は微塵も危険性を気にする素振りを見せなかった。
「…相手は取引を台無しにする可能性が高いが。大丈夫か？」
「ええ、ですからその時は貴方が全員撃ち殺し――」
「その頃には君の命は無いぞ」
コニャックの命を狙われてから、ようやく裏切りと判明する。ならばライが反撃する頃にコニャックは死んでいる可能性が高い。
「組織の為なら本望ですよ」
しかしコニャックは空っぽに笑う。
ライはその笑顔の意味を察した。
(…見ない内に洗脳でもされたか)
灰の瞳は空虚だった。その中の光は失われ、声に抑揚は無い。当然という態度が、ライの分析の正確さに説得力をつけた。
そして組織の、コニャックに対する捨て駒と同等の扱いにライは違和感を覚えた。
もっとも、彼がNOCとバレて組織を抜け、今に至るまでついぞその理由について知る事は無かったが。
任務当日。二人で途中まで取引場所の近くまで向かう最中、会話は絶えなかった。
「そういえば彼女さん、お元気で？」
「ああ」
「そうですか、まだお付き合いなされているようで何よりです」
「意外か？」
「ええ。相当お優しいのでしょうね、彼女さん」
「言うようになったな」
「立場上、余計な口は慎んでいましたが、今は一応対等ですから」
コニャックの言葉には一々棘が混じっていた。それも笑顔でさらっと言うものだから、昔とは大違いである。
「…対等なら何故敬語を？」
「敬語が嫌ならやめるよ」
「好きにしろ」
「でしたら好きにします」
「結局敬語なのか」
「貴方にはつい昔の癖で敬語になってしまうんです」
テンポ良く応酬は続く。だが空気が軽くなるわけでもなかった。二人は夜の路地裏へ向かい、目的地へと近付く。
しかし第三者の目が光った。
「――オイッ！お前…」
「…？」
コニャックとライは振り返る。夜闇のロクに街灯も無い道の先にいたのは、息を切らした一人の男。ライには視線もくれず、彼はコニャックへ近付いた。
「やっぱり……なァ、お前遥斗だろ！？」
彼の名前は阿鳥宗一。
コニャックの、倉間遥斗の過去の友であった。
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想世(プロフ) - ネルさん» コメントありがとうございます。そのようにおっしゃっていただき、とても嬉しい限りです。 (10月30日 21時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ネル - 最新話のイラストのコニャックの顔が本当に好きです！！闇のありそうな顔というか…！！ (10月29日 21時) (レス) @page28 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年5月26日 16時
