偶然のイタズラ−�� ページ25
「どうしたんだい、コナンくん。すごい汗だよ？」
まるで悪夢でも見たみたい、と揶揄するように笑うコニャックからコナンは遠ざかる。
「君は今、何を考えているのか、さとり妖怪に聞かないと分からないだろうな。なぁコナンくん、君は今何を――」
「ッ！」
悠長に喋るコニャックを置いて、コナンは勢いよく席を立った。向かう先はポアロの出入り口。一目散へと駆け、外へと出た。
「お代は僕が払っておくよ」
コニャックは今外に出たコナンにそう告げ、ひらひらと手を振る。だがコナンは見向きもせず、その声を聞き届ける前に米花町の通りを急いで走る。
コナンの脳裏によぎるのは、赤茶髪の髪を揺らす、自身の相棒だった。
(――灰原ッ！！！)
コナンは、灰原の危機を悟っていた。
コニャックが余裕綽々と無駄口ばかり叩いていた理由は？
コナンとの舌戦により情報を引き出されるかもしれないリスクを取ってまで、長々と会話に付き合っていた訳は？
時間稼ぎのごとく、
コニャックの知っている、コナンの最大の弱点の一つ。
それは灰原哀だ。
もし彼女の居所を掴み、そして彼女が狙いだとしたら――合点がいくのだ。コニャックが呆気なく正体を明かしたのも、冗長な長話をしていた事も、コナンを足止めしていた事にも。
(…くそッ、頼む。出てくれ！)
コナンは縋る思いで哀の電話へ連絡を入れる。しかし返答は無機質に鳴り響くコール音のみ。悪態を吐き、次に連絡を入れるのは彼女の同居人である博士。
早く、出てくれ。
切羽詰まった意識は、一秒を何秒、何分にも思わせる。その間にもコナンは子どもの足で走る。
だが曲がり角を曲がった途端、彼の足は誰かにぶつかる事で止まってしまった。
「あっ……と、ごめんなさい！ボク急いで――」
「いっつつ…ったく、前見ろよな…って、あ？」
コナンがぶつかった者は、衝撃でよろける。随分と不機嫌そうな声が、コナンには随分と聞き覚えあった。そしてコナンの脳が働く前に、危険信号を働かせる声でもあった。
「宗一、兄ちゃん――ッ！？」
「…なんだ、コナンか。急いでんのか知らねェけど、前見ろよな」
何故彼がここに。コナンは瞠目する。
『宗一は…"眠い"とか言って、ずーっと寝てるみたいでさ』
コニャックは確かにそう言ったが、宗一はここにいる。つまり嘘を吐かれたのだ。
疑心、疑心、疑心。
コナンは目の前の人物すら敵に見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
想世(プロフ) - ネルさん» コメントありがとうございます。そのようにおっしゃっていただき、とても嬉しい限りです。 (10月30日 21時) (
レス) id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
ネル - 最新話のイラストのコニャックの顔が本当に好きです！！闇のありそうな顔というか…！！ (10月29日 21時) (レス) @page28 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年5月26日 16時
