思惑乗せた観覧車−�� ページ48
私の意思。
…本当は組織から抜け出したいに決まってる。オルソンに恋愛感情を抱いているかはともかく、彼の手を取ってどこまでも逃げ出したい。
でも見つかれば間違いなくオルソンは殺されるし、日本にいるお姉ちゃんもどうなるか分からない。
私の意思など、意味が無い。
「ええ、私の意思。あなたは別の女でも見つけなさい」
「君以外の女性に恋愛感情なんか向けられないさ」
「なら一人で生涯を終えることね」
ゴンドラは頂点に達する。日が空の向こうに消えかけ、残火のような微かな煌めきが儚く空を彩る。けれど反対の空からはもう夜の帷が下りてきていた。
静かなゴンドラ内、響くのは私たちの声だけ。だから彼の言葉もすんなりと私の頭に入ってくる。
「――本当にそれが君の意思ならね。でも…違うだろ？」
「…あなたに何が分かるというの？」
「さぁ、分からないさ。むしろ君の全てを知りたい。分からないからこそ君に焦がれるし、分かったとしても君を愛おしく思っている」
真摯に私へ好意を伝える彼は私の手を掴み、その栗色の瞳を私に向ける。
…逸らしたくなるほどに、まっすぐと。
「だから教えてくれ、シホ。君を覆っている闇は一体何なんだ？俺は君のためなら、その闇を跳ね除けてみせる」
「…」
――彼の大口は健在ね。
「ムリよ、諦めなさい」
「…まだ分からないだろ、やる前から諦めちゃいけない」
「結果は明白よ。むしろ――…」
「――迷惑だから、やめて頂戴」
こう強く言えば、彼も退いてくれる。私が本気で嫌がることはしない彼だから、すごすごと引き下がる。
「……分かったよ」
予想通りの回答が返ってきた。普段冷たく彼に当たるけれど、今日はさっきまで楽しんでいたことや、普段より強い物言いのせいでショックも大きくなっただろう。
「でも連絡は取ろう、シホ。例え一年に一度しか会えなかったとしても構わないから」
「イヤよ」
けれど彼のワガママで、不安はくすぶる。彼の要求を飲んだら、組織は彼をも見張るかもしれないのだ。
「連絡だけでも構わない。お願いだ、シホ。俺は君のいない世界はつまらなくて、生きたいと思えない。君に会ったからこそ世界は色づいたんだから」
「…あなた、重いって言われない？」
懸命なお願いに必死さを感じた。引き下がるつもりはないらしく、私を強く見ている。
「……仕方ないわね」
結局、私は根負けしてしまった。
今回の彼の言い分は、大口ではないと悟ってしまったから。
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想世(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます。そのようなお言葉を頂けて嬉しい限りです。シホちゃんとヒロキくんとノア……あれ、ノアはハブられてる！？…と、とにかく彼女達には幸せになってほしいですよね。更新頑張ります。 (2023年4月10日 14時) (
レス) @page41 id: 7931d7abb1 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ノア…はまあいいとしてシホとヒロキには幸せになってほしい。特にヒロキ！！生きろ！！！めちゃめちゃ面白いですよこれ凄い好きです。更新頑張ってください！ (2023年4月10日 13時) (レス) id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：想世 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/
作成日時：2023年2月21日 18時
